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ジュアスsideお試しはどちらから
私の目の前で、真実の愛は育てるものかもしれないとうそぶく、アンナマリーは相変わらず魅惑的で愛しい生き物だった。アンナマリーのように普通じゃない令嬢を口説くのは、普通のやり方ではダメだと思った私は、社交辞令など振り払って、不作法にも伯爵家に押しかけたのだ。
こんな時に王弟の権威を使わなくてどうする。いつも面倒な役割ばかり押し付けられているのだ。立場を利用したっていいだろう。戸惑う伯爵夫人に詫びながら、興味深そうに見つめるアンナマリーに、私は心惹かれていた。
年端も行かないのは16歳なのだからその通りなのだ。しかし、アンナマリーと話をしていると、そんな気が全くしない。精神的に大人なのか、考え方が飛び抜けて変わっているせいなのか?とにかく私はアンナマリーと『愛を育てる』協定を結んだ。よくやった、自分。
私はアンナマリーと二人きりになると、手を取り窓際にエスコートした。
「マリーには、単刀直入に行動した方が良いと思ってね。マリーはお試しがしたいんだろう?私を試すかい?それとも私に試されたいかい?」
マリーは不思議そうな顔で私を見上げた。
「今のは何か違うのかしら?」
私はマリーに大真面目に言った。
「もちろん、大違いだ。私を試すのはマリーで、マリーが試されるのは私にだ。」
マリーは眉を顰めて言った。
「全く訳がわからないですわ。」
私はニヤリと笑うと指を一本立てて言った。
「じゃあ、こう言い換えよう。マリーが私を口づけで蕩けさせるか、その逆か。どうだい?自信はあるかい?」
マリーは私をじっと見つめて言った。
「いいですわ。じゃあ、わたくしが閣下を蕩けさせますわ。」
私は頷くと、マリーの手を引いて部屋のソファへ私だけ座ると両手を広げて言った。
「閣下はやめないか?口づけるのだから、ジュアスと呼んでくれたまえ。さぁ、いつでもどうぞ?お姫様。」
マリーは勝手が違うのか、少し躊躇した後、おずおずと側に寄って来た。だが、口づけるには屈まないといけない。どうしたものかとしばらく考えている様だったけれど、そっと私の膝の上に横座りすると両肩に手を添えて顔を寄せて来た。
私は甘いマリーの香りを堪能しながら、そっと腰に手を回して支えた。決して逃げられない様に抱えた訳ではないと自分に言い聞かせながら、マリーの唇が降りてくるのを待った。
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