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ジュアスside驚きの告白
久しぶりに訪れたアンナマリーの家は、前回のむせ返るような甘い記憶が染み付いているようで落ち着かなかった。目の前に座っているマリーは相変わらずの美しさと儚さで、実際の活きのいいマリーとのギャップが私には随分可笑しく感じられた。
それを家族以外で自分だけが知っている事に優越感も感じていた。だが、その思い上がりもあっという間に打ち砕かれてしまった。可愛らしい唇からもたらされる、衝撃的な話の内容に私は自分のプライドがぐらぐらと揺さぶられるのを感じた。
アンナマリーは私以外の男と口づけ以上のコトをして、しかもそれがなかなか良かった。そう言ったのだろうか?私はアンナマリーの行動力を見誤っていたようだ。
元々結婚のためにお試しをするべく、何人もの男たちと口づけをするデビュタントなんて聞いたこともないじゃないか。それともバレてないだけで、皆こっそり行動しているのだろうか?
私はすっかり動揺して、何もかもが疑いの対象になってしまった。しかしマリーの言う、男なら許されるのかと言う責めには一理あるとも思ったのも事実だ。お互いが納得してこそ、良い結婚だが…。
「マリー、そもそも貴族同士の結婚は愛よりも政略なんだ。マリーの両親のように両方を手に入れるのは珍しいのだよ?その点私は自由な立場だから、政略よりも愛に重きを置けるがね。
マリーの行動には確かに驚かされたけれど、危険な行動なのは間違いない。マリーは愛を見つけたい、そうだね?…マリーは私のことは好きかい?」
マリーは私の事を少しの間見つめていた。私はマリーが何と言い出すのかと、胸がドキドキと速くなるのを感じた。マリーは肩をすくめて言った。
「…わたくし、ジュアス様の事は好きだと思いますわ。今、ジュアス様が怒って二度と会ってくださらなくっても不思議じゃない事を告白しましたでしょう?ですけど、ジュアス様はわたくしをなじったりしませんでした。
しかもこんな事、誰にも言えませんもの。ジュアス様にしか言えないってことは、わたくし、ジュアス様に随分気を許してるんじゃございませんか?」
そう言って恥ずかしそうに微笑むマリーは天使のようだったが、実際の中身はまるで逆の小悪魔なのだ。私はこの矛盾する魅力的な彼女と人生共に過ごせたら、きっと退屈などしないだろうと苦笑いするしかなかった。
ああ、どうしたら彼女の心を自ら私に縫い止めることが出来るのだろうか。
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