マイケルside再びの衝撃

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マイケルside再びの衝撃

久しぶりに見る妹マリーは青白い面差しのまま寂しげに微笑んで、王弟に失恋したのだと言った。 私たち家族は、誰一人言葉もなくマリーを見つめていた。というより、マリーの言う失恋の意味がよく分からなかった。王弟からの婚姻申込書は、あの社交界デビューの次の日には届いていた。そしてそれは撤回されてはいない。 一ヶ月前にマリーと王弟が会った後は、確かに二人は会っていない。けれども王弟は一ヶ月マリーに自由に考える時間を与えたいと私達にことづけて行ったくらい、マリーを大事にしているではないか。 なぜ、その王弟にマリーが失恋という事になるのだ? 「…マリー、王弟はマリーと結婚したいと思っている筈だよ?なぜ、失恋になるんだい?」 僕はマリーに尋ねた。マリーは僕を見上げて呟いた。 「…それは、王弟がわたくしに失望なさったからです。きっともう、私のことなどもう好きではないはずですわ…。」 マリーはそう言うともう話は終わりだとでも言う様に、踵を返してファミリールームから出て行ってしまった。僕たちは顔を見合わせるしかなかった。 父上が母上に何か聞いているかとお尋ねになったけれど、母上も寝耳に水だった様で動揺が隠せなかった。兄と父上は王弟へ連絡を取るために慌てて執事と出て行った。 僕はため息をつくと、用意されていたスイーツとお茶を一人分テラスに運ぶ様に頼んで、本を片手に先にテラスへ向かった。 テラスには先客がいた。陽射しの中で見るマリーは確かに面やつれしていて、僕を強張った表情で見た。僕はあの、人を困らせてばかりのマリーも大人になったのだなと妙な感心をした。 「マリー、ここに居たのかい?今、ティーセットを運んでもらっているから一緒に飲もう。」 そう言っている側から召使いがティーセットを運んできた。必ず予備の茶器があるのは知っていたので、僕は二人分淹れてもらうと、しばらく二人にしてほしいと皆を下がらせた。 「お前もこのひと月、随分考えたんだ。僕が言うことはないよ。真実は今ここに無いからね。さぁ、美味しいお茶を飲もう。お前の好きなオレンジケーキもあるんだ。今日はついてるだろう?」 僕がマリーに微笑むと、マリーは緊張を解いてにっこり微笑み返した。僕はこの静かで平和な時間を、適齢期のマリーと過ごせるのもそんなに残っていないのかもしれないと思った。 それは正に真実だった。残っていなかったのではなく、無かったのだから。
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