昇降口のショート・ロマンス

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「今日は部活のミーティングが入っちゃったから、ここで」  別の日。今度は教室を出るやいなや、私を追い越して階段を駆け上がってしまった。  私が下りるはずだった階段を軽快に登る彼女の後ろ姿を見て、「もしかして嫌われてる?」なんて思ったりした。今に始まったことではないのに、一旦不穏な気持ちが始まると暫くは元通りには戻らない。  鳩尾のちょっと上辺りが苦しくなって、でもその場でしゃがみ込むことも出来ないから、無理矢理体を動かして、階段を下りた。  昇降口に差し掛かって、ようやく空の異変に気が付いた。上履きからローファーに履き替えて、日よけの下から空を見上げると、どんより灰色雲が空を覆っていた。今にも降り出すぞ……と思った矢先、サァッと地面が波打った。  ゲリラ豪雨。その言葉がぴったりだ。  
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