海から大陸から大氷

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海から大陸から大氷

ピーポーピーポー。  救急車なら呼んだよだから・・・目を開けてよ!パパ・・・ママ!!  両親の死は突然訪れた。 「何が孫の顔が見たいだよ・・・だめじゃん・・・もう私一人きりだよ。」  両親はたくさんのものを置いてったけど時雨ときさめの心を埋めるものはなかったのだ。  それでも気丈にふるまうのが自分の役目だと言い聞かせていた。  時雨・・・雨が時を刻む。そんな意味だったか。  私はあてもなくさまよっていた。 (公園か・・・。)  家の近くにあるよくあるような公園。  時雨はため息を置いてきたかのように腰を下ろした。  雨など降っていない。だけど世界は光を折り曲げて向かってくる。  こんなとこにいても仕方ないのに。  だけど足は動きそうにない。  だめだ。立ち直らなきゃ。ふと一粒の雨粒が腕を伝った。  ??。  ふと上を見上げた。  虹。  まごうことなき見事な七色の虹。  だがとても儚い色に見える。  それはまるで自分の心を映す鏡のようだった。 (私の心か・・・。くすんで見えるな。)  私の色ならちょっとだけでいいその色で勇気を分けてほしい。  キラキラ☆キラキラ  上には蜘蛛の巣が張っている 「ははっ。こっちのほうがきれいに見えるや。」  雨粒がビー玉の様に透けて見える。  そうか蜘蛛の巣・・・埃が溜まってたっけ。  お父さんとお母さんの部屋。  最後に掃除したのは私が幼稚園の頃だったか。覚えてないけど。  ・・・帰ろう。  私は帰路に就いた。  家に帰ってきたけどやることなんてない。  掃除?また今度ね。  今日はお風呂に入って寝よう。  カチっカチっ。  おやすみなさい。  ――――朝  ふう。眠るだけで気分がいくらかましになった。  人間である以上欲求には抗えないということか。  学校・・・。行かない。今日はある所に行かなければならない。  自転車に乗り坂道を下る。  グングンギュンギュン。キキ―!がちゃん。  引き取り先の候補のお家。  私は18歳。保護が必須な年齢ではないけれど望むなら保護してもらえるそんな小難しい年齢だった。  ピンポ――ン・・・。  がちゃっ。  出迎えてくれたのは優しそうなおば様そして居間に通されると貫禄のある猫背のスーツ人が座っていた。  話は一応聞いてはいた。だけどどうしても父親の影を重ねてしまう。  カチッカチッカチッカチッ!  時計の音も気になる。どうして私がこんな肩身の狭い思いをしてしまっているのだろう。  おもうに父のせいだ。そうとしか思えなかっただから私は行動した。 「やっぱり。」  二人はきょとんとしている。 「私の両親は天国に旅立ちました。ですが、私の胸の中には両親が残っているのです。  なのでやはり考えるに一人で暮らしたいと思います。」  遠くの方で虹が輝いていたのを覚えている。  引き取り先候補の家を後にして最後の親孝行を実行した。  パタパタ!もくもく。  はたきで叩くたび埃で視界がくすむ。  親孝行。それは両親の部屋を掃除することだった。 「ごほっごほっ」  九州の東の方ちょうど太平洋の見える街。そこが私の生まれ育った街だ。  視界がほぼゼロ。比喩じゃなくてホントに。  パタパタ!どんっ。  ガシャあ。  何かを落としてしまったようだ窓を開けよう。何で気付かなかったのか。  がらがらっ!  ん、だんだん見えてきた。  オルゴール?いや、宝箱みたいだ。  中身が飛び散っている。 「あちゃー。割れ物なきゃいいけど。」  中身はごちゃごちゃしててあまりよくわからなかったがとりあえずしまっておいた。  ふと窓の外を眺めたがさっきまであったはずの虹は消え去っていた。  バシャ―ン!!  風呂の水を勢いよく頭にかぶるとわしゃわしゃと頭を洗うことにした。  しゃかしゃかわしゃわしゃ。  ざっぱーん。  気持ちよかった。父母の部屋もかたずいたことで肩の荷は下りた。  この家で暮らすにはどうすればいいか。  区役所のお姉さんが名刺をくれたっけか。  ―――区役所 「すみません。このお姉さんはいらっしゃいますでしょうか?」  ふくよかなおばさまがメガネをかけて名刺を受け取ると 「少々おまちください。」  そういうと奥に消えていった。 (いきなりだったけど大丈夫なのかな・・・?) 「こんにちは。時雨さん今日はどのような用件で?」  息を吸い込むと言い放った。 「あの!保護の件ですが!お断りしようと!思って!」  お姉さんはフフッと笑うと 「では遺産相続の権利が発生します。相続しますか?」  いさんそうぞく?遺産ってあの遺産? 「具体的には何が相続できるんでしょうか!」  お姉さんは困り顔を作って見せた。 「鍵がない船舶が一艘です。カギにつきましては探しても見当たらないんですよ。  管理してる人はお父様になってましたしお家を探してみられるのはどうでしょう?  あっ相続税というものがかかりますが船舶に対してはモノですので税は徴収しませんので安心してください。」  書類にサインと印鑑を押して簡易的に手続きは終わった。 「では港にあるさきとめ号がそれにあたりますので管理の方をよろしくお願いいたします。」  たしかにそうか。相続はタダでも管理費はかかるのか。  明日の自分にまかせて今日は帰ろう。  そうだな。旅に出てもいいかもしれない。  考えておこう。  かちっかちっ。  おやすみなさい。  ―――引き取り先候補家 「遺産相続をしたことを報告くらいしとこうと思ったので来ました。  カギがなかったことが残念でしたが父母の大切な遺産ですので相続しとこうとなりました。」  話し終わるとお茶を飲み干して立ち去ることにした。  ?。お父さんの宝箱?ああー昨日のあれかな。なんかよくわかんなかったので閉まっておきました。  え?その箱に鍵が入ってるかも?お父さんが大切にしてたから?・・・ありがとうございます。探してみます。  大体そんな内容の会話をして家路についた。  宝箱は仏壇においてある。  少しとるのを躊躇したが手を合わせてからとらせてもらった。  かぱっ。  慌てて入れたからごちゃごちゃだ。  なんだこれ。コンパス?針がないけど。  昨日落としたときか。  二階へ上がり部屋のドアを開けて昨日ぶつけたところを探した。  あった!ん?なにか本棚の下にある。  ・・・鍵とメモ書きが隠してあった。  鍵には文字が彫ってあった。  ―――NIZI  ただの記号にしては豪勢に彫ってある。形もちょっと鍵とは言えないけどな。  メモにはこう書いてあった。  虹の根本に鍵を供えろ。と。  裏にも何か書いてある『公園の水飲み場。』  公園?明日にでも行ってみるか。  ぱちっ!  電気を消して部屋を出た。  ―――公園  水飲み場は二つある一つは丘になってるところもう一つは砂場の横。  鍵が見つかる最後のチャンスか。  でも鍵なんて誰かが持ってってもわからないじゃん。  あはは! がやがや! きゃっきゃっ!  平和だな。少し考えてみよう公園は小さい子もいるが大人ももちろんいる。  子供が遊んでいるのは砂場のあたりか。  大人は公園の端っこを歩いている。  子供と大人は行動範囲が違う?  水飲み場は砂場は子供、丘は大人が主に利用しているのがわかる。  大人・・・子供。  背の高さか?丘まで登る体力は子供にはない。逆はその限りではない。  つまり低いところを調べたら・・・。あっホントにあった。  父の適当さと悪知恵を思い知った。  ―――港  でかでかと船の背にさきとめ号とかいてあった。  ガチャブルルルル。  掛かかった!いったん帰った着替えてまたこよう。  ―――自宅  着替えてっと丈夫な服装に薄手のシャツ。これでよしっと。  ―――港  行こう。ここには何も残ってないんだ。  ・・・・・・。  ―――引取り先候補家 「はい。旅に出ることにしました。のでお礼を言いに来ました。ありがとうございました。」  おばさんは何か言うでも引き留めるでもなくただ見送ってくれた。  空には虹がかかっていた。  ―――さきとめ号 「これだけは持って行かなきゃね。」  ポーチにすっぽりと収まる大きさでよかった。  宝箱を持っていく。それ以外はおいてきた。  メモには虹の根本に鍵を供えよとあった。 「よし!しゅっぱつ!」  今は古き東の大海原―太平洋へと出発した。  ―――太平洋  行き成りだが虹を見失った。  この海の中で何の目印もなく彷徨ったのはまずかったか・・・。  こんな時どうすればいいかなんて海に出たことのない私にはわからない。 (掃除でもするか・・・。)  こんな時でも掃除をしてしまう・・・性なのかもしれない。  ごしごし。さっさっ。きゅっきゅっ。  一通り掃除を終えたが、それにしても汚い。  一日や二日じゃ終わらない自信がある。 (そういえば掃除してた時に見つけたんだっけ)  宝箱を開け中身を一瞥する。 (あれ?コンパス?そういえば針を戻すの忘れてたな)  コンパスに針を戻してから針の先を確かめた。  ?。太陽の方向を指してる?  太陽は東から西へ・・・だったはず。  でも、コンパスは北を指し示すはずだから・・・。  コンパスの裏にもNIZIの文字があった。 「虹のコンパス??」  確かに出発した時は虹に向けて旅に出たはず。  ならコンパスの指す方に・・・。 「虹が出てくれればなあ・・・。あっ、」  カモメが頭の上を飛び立つ。その先にちょっと高めに虹が掛かっていた。  カモメが後ろからも来て魚をくわえて飛び立っていった。  ばしゃばしゃ!!  それに反応して魚の群れが弧を描きながら飛びつつ泳いでいく。 「トビウオかな?帰りの目印になりそう・・・。」  夕焼けに胸が焼けていく中、心に映像を刻んでいく。 (もう夏かあ)  暑さの中にも風節が見えた。  ここにいるのは私一人。そう思ったら胸がきゅんってなった。  太平洋を渡る間だけこの気持ちを持って居よう。  夕暮れが頬を慰める間、そう感じていた。  ―――海  太平洋はとても広い。  そうまざまざと思い知らされたのは初めてだった。  ・・・船に出会わない。  船どころかトビウオ意外の生き物すらいない。カモメさえも。 「だぁぁぁぁぁぁー-----!!!」  思わず唸ってしまう。そんな何もない日常。  コンパスは相変わらず真っ直ぐ進行方向を指し示している。 「はぁ・・・虹の気まぐれ・・・。」  古くからあることわざで虹を気にして虹に振り回される・・・そんな言葉だった気がする。  まさか自分がそうなるなんて夢にも思わなかった。  虹のばかやろー--!!そう叫びたくなるのをくっ、と抑えて水を飲んだ。  ――――海 「果てしなく、続ける景色、追い越せぬ。」  こんな俳句のような歌が思いつくほどには暇なのだ。  せめて冬なら・・・いやだめだ。冬だと船から落ちることがつまりジ・エンド。  つまり夏だからいくらかはマシ・・・ということだ。  来た方を見てみる。永遠に広がる海。海。海。  普通なら頭がおかしくなっていてもおかしくはない。 「海を眺めるのが好きで助かった・・・。」  心底そう思う。そう、おもう。  ―――――海  ふっ、やれやれだぜ・・・こいつにこんなに手を焼くなんてな。  ぐあぅ!この小僧!ナイフなんて仕込んでやがったか。  チンっ!ナイフが地面に落ちる。  くくくっ!このナイトラインさまに立てつくなんざ30年ほど早い早い!  ふっ。月光を背に浴びながら不敵に笑って見せる。  ナイトライン・・・それが貴様の名か?ならば俺も教えてやろう。  月光の刃。名をナイトラインという!!  なに!?貴様、俺の名を語るということが無謀なことと知っているのか!?  貴様ほどではないよ。後ろをみたまえ。  !!。後ろにいた奴等が地べたに伏せてやがる。  貴様なにをした!?  男の手元にいたはずの少年はいつの間にか消えていた。 『君たちの命は貰った。』  カードを見た男が次に見たのは絞首台だった。  ・・・私はすっかりと小説を書くのにハマってしまっていた。  これで17話目だ。最初はほんの少し書いて満足するつもりだった。だったのだが・・・このざまだ。 「気分を変えようかな。外の空気でも・・・。」  久しぶりのシャバはデカかった。  いや、シャバがではない。虹が、だ。  目の前には空高くアーチを描ける虹が聳えていた。 「ここが目的地・・・?」  確かめるためにコンパスをみた。  くるくると回っている。ということは・・・。  船の下を確かめる。陸地があるようだ。  からん・・・。  静かな空間に梯子の音が鳴る。  ・・・人の気配がする。どこだろう?  行先はわからない。とりあえずは奥へ奥へと進んでみる。  ―――虹の根本  奥へ進むのに苦労はしなかった。  道があったからだ。自然の、でも不自然な道。  ?。横壁に文字が彫ってある。いろんな文字で、いろんな単語で、いろんな言い回しで。  ・・・日本語でも書いてある。 『終わらない秋。起こしてはならない。厄災北る。』  そのほとんどが読むのに支障がないレベルに保存状態がいい。よほど人の手に触れてなかったらしい。  其の壁の先で文字が途切れていた。道の終わりらしい。  NIZIの鍵を供えろというからにはどこかに置く場所か差し込む場所があるはずなんだけど・・・。  鍵穴もなければ置く台のようなものもない。  こういう時は基本に帰ろう。  基本*見えるものにこだわるな。  冒険ものにありがちなこととか?  いや、冒険物を“自分で書く”としたら?  読者に伝わる尚且つ難解な解き方・・・。  そう例えば・・・鍵を透かして光を壁に充てるとか?  NIZIの鍵をすかしてみよう。  キラッ!天井からの光で透かして見た。  ?。天井?ここ島なのに天井がある?  ここは虹の根本・・・あっ、そっか海から見たとき少し高い場所にあったっけ。  ということは虹より下にいるんだ。  上に登るならさっき道で緩やかになってる壁があった。  少し戻って・・・ここら辺かな?登ってみよう。  ざっざっ。  十数分登ったところか。崖が上に見えているところに・・・上・・・に、扉がみえかくれしている。 「よいしょっと。うんっ。しょっ。」  崖はそれほど高くないので手を掛けて反動をつけて登りきる。  目の前に広がるは宝石のはめられた扉。  大きさはそれほどとは思えない。 (鍵を置く場所・・・鍵穴?)  扉の前に机くらいの大きさの台。  斜めってて置くことはできないがカギ穴が開いていた。  蔦をぶちぶちと払いながら書かれた文字を読んでみる。  日本語では『NIZIの根本 IZINの鍵を示せ』 「ここに鍵を挿せばいいのかな?」  ざしゅっ。異音を放ちながら鍵が刺さる。  ギギギ!異質な音を立てながら回る鍵。  折れそうなくらいの力を込めた。  ガキンっ!音を立てて回りきったことを示す。 「小説なんかだと勝手に開いてくれるんだけどなー。」  扉を押す手に力が入る。ゴゴゴ......。  唸る虹まるでくずれ・・・くずれてるじゃん!!  足元は虹でできてたらしく空高くそびえる虹もろとも崩れていった。  すんでのところで部屋に入ることができた。  質素な石室・・・いやこれは全部宝石?くすんではいるけど・・・。  ここの宝石を持ち帰るだけで一生暮らせそうと思うのは私が子供なだけか?  試しに一欠けら掘り出してみる。  水筒で・・・ゴンっ!!  手に煌くその欠片は・・・一応持って帰ろう。  それよりも明るいようで周りが見えない。  そう、まるで雲がかかったように。  雲の上の様に見えづらい部屋の中央に何か見える。  近づいてみよう・・・。  キンっ!宝石を蹴ったように音が響いた。  キンっキンッキンっキンっキンッキンッ!  音が狭まってくる。  がらっがらがらっ!!  !。水晶の中から誰かが倒れこんでくる。 「わっとと。セーフ。」  どうやら怪我はないらしい。・・・かわりに意識もないらしい。 (おもい・・・。)  どうにもこうにも外に足場はなくなったし。  がこんっ!  なにかとても大きなものが当たる音がした。  そーっと部屋から外を覗くと 「船だ・・・。そっか。虹が崩れて海が流れ込んだ。つまり早くしないと流れてっちゃう!」  梯子は流れたしうんっ!そうしよう! 「てやっ!」  船へと身を投げた。  どんっ!「あいたーっ。」  痛い。当たり前である。だって木ならまだしもコンクリ製だもん。 「う・・・んっ。」  どうやら起きたらしい。あいにく服は着ているのでそういうシーンは見れない。 「そら・・・がは!」  呼吸器に何か詰まらせたらしい。私はもう何も失いたくはない。  その男の子にくちびるを重ねた。 「ふー---。ふー----。」  息を送り込んで異物を奥に押しやる。 「げほっげほっ!はあはあ、水・・・。」  水ならそこ等中にあるよ?などと馬鹿を言ってる場合ではない。  そもそも船が沈みそうなのだ。 「ちょっと待ってて!」  時雨は舵を主舵いっぱいに取った。  ぐぬぬ。さすがに女の腕でこれは・・・。 『ガシッ』  咳き込みながらも舵を取るのを手伝ってくれた。 「・・・・・・!!!」  手が触れた。生まれて初めてかもしれない。異性と手をつないだのは。 「どっどっちに回せばいい??このまるいの!!」  舵のことか。 「右へ利き手の方へグルって回して!!」 「りょーかい!」  夏だというのに少し肌寒いだけども手は少し暖かい。そんな甲板での数分。  どさっ!  男の子はへたってしまった。  大丈夫だろうか? 「そっか!水だよね。みずみず。」  柄杓では足りないだろう。水筒から直接・・・。  でもこれって・・・かん、いやなんでもない何でもない。  ごくごくと勢いよくお茶を飲み干していく。  からんっ。水筒がもうありませんよ!って悲鳴を上げる。 「ぷはー!生き返ったよ。」  この子は何者だろうか。 「キミ、名前は?」 「空。」  短くそう告げた。それ以上は喋りたくないらしい。  びちびちびちっ!  トビウオが崩れた虹に埋もれまいと飛び出す。 「あっまって!」  トビウオを目印にしないと帰る方向すらままならない。  舵を勢いよくきった。がこんっと音を立てて動き出す。  ――――海  トビウオの群れを追い越して太平洋へと出る。  相変わらず空は喋らない。 「そら?」  空は空を見上げて上の空。 「秋雨よ 恋よ来いよと 上の空」 「?。」 「俳句。知らない?季節の語句を加えた5・7・5で今の心境を映し出すって歌。」 「秋・・・うぐっ・・・。」  空が頭を押さえて苦しみだす。 「いたいの?大丈夫?」  とりあえずは寝かせた後に水枕を挟んでおいた。  ―――――――――???  ざざーん。ざざーん。  海の音が聞こえる。だがしかしそれは私たちの知るそれとは違っていた。  ざざーーーーん。  がんっ!!!どおん!!!  港へと招かれざる客がやってきたようだ。 「空!早く降りて!」 「時雨!飛び降りたら死ぬ!!まず梯子をかけて・・・。」  どうやら招くつもりがなかった。の方の招かれざる客のようだ。 「HEY!!」 「た、たかっ!!外国人???空!あの人に向かって飛び降りて!」 「わかった!」  空が勢いよく飛び降りた。  時雨は・・・梯子をかけて船が沈む速度で陸地へ降りている。 「とう!時雨生還!!」 「遘√?遒コ縺九↓隕九◆縺ョ縺??」  その声に集まってきたのは皆アメリカ人だった。 「螟ァ縺阪↑髻ウ縺後@縺溘°繧芽ヲ九↓譚・縺溘●」 「ふむ・・・。」 「縺薙%縺?i縺ァ蟆上&繧√?闊ケ縺悟、ァ遐エ縺励※縺?◆」 「???。」  私こと時雨には学はない。技術もなければ世渡りもうまくない。 「蜷帙◆縺。縲∽ケ励▲縺ヲ縺?◆縺ョ縺具シ滓?ェ謌代?縺ェ縺?°縺ュ?」  こ、こわい!これは怪談とは違った恐怖がある。 「い、行こう。空!」 「うむ。」  人ごみを走り抜け街の方まで出てきた。  ここまで来ればどうにかなるだろう。  ・・・警官が見てるけど大丈夫でしょ。  嗚呼、虹が見える。 「終わらない秋は三度来る。その二回目。」  空の言ってることはわからなかった。  私たちの向かう先はない。  決められぬ旅に出よう。  はるか彼方へ、旅の始まりは私たちが決めるものだ。  虹は確かにそこにあった。だから私たちがここにいる。  行こう。どこまでもどこまでも。コンパスはどこを指してる?  !!。虹のコンパスはくるくると円を描いている。  そういえば虹って最初海の方にあってそこから来たんだよね?  虹ははるか遠く陸地の彼方へと伸びていたのだ。  太陽が沈んでいく。その後ろから伸びる色がいつもより奇麗に見えた。  比喩ではない、確かに”七色以上ある” 「時雨、虹がどうかしたか?」  が虹は瞬まばたきの間に消えてなくなった。  空にはもう夕空しかない。 「今日はここでキャンプしようか?」 「気にしない。」  空の言ってる意味が分からない。 「えっと・・・?気にしないっていうのは、どゆこと?」  はあー。空の深い溜め息が聞こえた。 「どこで寝ようが気にしない。野宿でもいい。」  そ、そういうこと・・・。空の深い言動など気に留めなかった。  ―――――サンディエゴ  夜明けになってから気付いてしまった。  看板に英語、韓国語、中国語、とにかく様々な言語で何か書かれている。  ←サンディエゴ沖ーカリフォルニア半島→  ここってもしかしてアメリカ? 「虹だ。」  そんなことを考えていたら虹が出てきていた。  空が割って入った。 「昔々の話だ。」  昔々季節が終わらなく巡る災害事故が起こった時代があった。  その昔は電気ではなく光で機械を動かしていた。  光は凄まじいエネルギーを産む代わりに宝石の色を奪っていった。  ただ、その災害の時、世界を埋め尽くしていた宝石たちは見る色もなくなっていた。  その災害を止めるべく集められた7人の秋。そして七人賢者と呼ばれる科学者たち。  そして七人賢者の計画した、光を七色に分ける計画を実行に移した。  結果。。。 「結果??。どうなったの?。」 「虹が生まれ、虹の根本に島ができた。」 「終わらない季節は?」 「北極以外で季節は変わり続けるものになった。」 「じゃあ、大成功だね。なに?急にそんな話。」 「虹の根本には七人の秋が安置されたんだ。生きたままね。」 「!!。」 「僕は空じゃないIDナンバーGHUQ”S0RA”」 「でも空は空だよ。」 「本当に?」 「夕空は儚いものだ、だけど代わりはいない。だから美しいってね。」 「時雨・・・。」  空のほっぺにキスをした。 「!!。」  空にはまだ早かったかな?  目の前に人がいるのに気が付かなかった。 「縺薙%縺九i蜈医?繝ュ繧ケ縲よ綾繧九→繧オ繝ウ繝?ぅ繧ィ繧エ縺?繧医?」 「NPC乙。」 「え?」 「いや、この先に行けばロサンゼルスだってさ。」  話しながら歩いたのでさほど距離は感じなかった。  だが、確かに暑い。日本とは別の日差しの暑さ。照り付ける太陽で焼き肉になりそうだった。  グー-ー。。。  肉が食べたい・・・。空に提案してみた。 「空さ。肉食べたくない?ほら。そこらへんの動物でも。」 「だめだ。」  空の思わぬ即答が返ってきた。 「なんでー?そこら辺のなんか見たことのない生物、食べられそうじゃない?」 「日本からアメリカのような土地に渡ってきた場合、3つルールがある。」  其の1.水がないとき肉の様に喉の乾く物を口にするな。  其の2.外国の生き物を殺してはならない。  其の3.見知らぬ生き物には毒があるかもしれない。 「ごくり・・・。かにさー--ん。カニカニー-ー。。。」  時雨は聞いてなかった! 「・・・」ガシッ‼  時雨の首根っこを無言でつかんで移動した。 「ちょっ、ちょちょっと!!待って・・・かにー--ー--!!!」  ――――――ロサンゼルス 「おなか・・・グゥー---。」 「店に入ろう。できれば水が飲み放題のところ。あそこはどう?」  空の指さした先には『焼き肉』と書かれていた。 「お金は?そういや虹の根本で宝石あったから持ってきたんだっけ?売ろうかな・・・?」 「宝石の価値なんて興味はないけど旅銭はあるだけあればいい。」 「えっと、つまり?」 「売る。」  空の言い回しにはなれる気がしない。  子供・・・とはいっても18歳なので大人といえば大人なのだが、大丈夫か不安にはなる。 「縺?i縺」縺励c縺?シ∵鋤驥托シ?300??シ」 「それで。」 「えっ?えっ?」 「いこう。ここにはもう用はない。」  空にまかせてよかったのか・・・?それ以外ないのだが。  どうやら17万円ほどになったようだ。 「肉。」  空の一言でなぜか大量の肉が運ばれてきた。 「ちょっ、(ちょっと空!こんなに食べられないよ!)」 「これがレギュラーサイズだ。アメリカのお子様サイズだ。仕方ない。」 「へ、へー--。ふーん?(なんで、んなこと知ってんの??)」  もちろん空はペロリと平らげた・・・が、私はそうはいかず・・・。 「気持ち悪くなってきた。これフードファイターの量じゃん!」 「うむ。」  そういうと空はコトンとコップを置いた。  ガブっ!! 「!!」  空が噛んだ。肉をガブリガブリと口に収める。  おぉぉぉぉぉぉー-----!!!  あの小さな体のどこに入るんだろう??  しゅっ!  空は天に腕を掲げてガッツポーズを取った。  みなかったことにしよう・・・。  時雨は無言で店を後にした。 「ふぅ・・・。虹だ。最近多いよね。そういえば出てる方向違うような・・・。」 「時雨。待たせた。」 「空。虹の方向ってなんかあるの?」 「なんかとは?」 「虹の根本とか・・・。」 「ふむ。なくはない。だがたどりつくこともない。」 「ドユコトデスカ。」  虹の根本は七つある。七人の秋をそれぞれ祭っている。終わらない秋を終わらせるため。  それぞれGHUQ”AKANE”  GHUQ”YUUYAKE”  GHUQ”RAKUYOU”  GHUQ”SYAZITU”  GHUQ”SYAYOU”  GHUQ”RAKUZITU”  となっている。それぞれの名は赤い日斜を表していて虹が均衡を崩したとき西へ、そして南へ動き始める。  つまり秋を一人でも助けるということは他を捨てるという選択になるというわけだ。  つまり”もし”秋が最後の一人まで助け出されようと最後の一人は消えてしまうことになっている。  之こそが七人賢者の置いた罠というわけだ。因みに虹の根本は世界に散らばっている。・・・動きながら…ね。 「ゴクッ・・・。つまり秋っていうのは死なない人っていう・・・?」 「そうなる。」  空・・・。かわいそうに・・・。  ぎゅっ!時雨は空を抱き寄せた。  かわいそうに・・・。そう言って静かに目を閉じてつぶやいた。  星が燦々と輝いても彼らを照らすことはなかった。  ――――――ベーカーズフィールド  ベーカーズフィールド,1の靴屋ここにあります。  看板を見ている分には構わないだろう。だが。この先に進むというなら命は貰おう! 「時雨。またか。」  ベーカーズフィールドの境界線に立ったのが運の尽き。どちらへ進もうが地獄。  この選択こそ秋を終わらせる。運命ならば・・・。斬る!! 「時雨。その辺で。」 「ええー-?ここからがいいとこなのに?もうちょい!もうちょいだから!」  ベーカーズフィールド,1の靴屋・・・の机で小説を書く時雨。  そしてそれを止める空。力関係的には時雨は劣っている。しかし?ひつこさなら同点だ。  空がやめさせようとしても無理!と意地を張るのが時雨。  時雨になにを言わせてもそのとうりになってしまう。舌の上手さを間違えて産まれてきたやつ。  それが時雨。  机に突っ伏している姿はまさにコアラ!コアラではないような。 「タコス!HEY!タコス一つプリーズ。」  時雨の声を無視して空へと尋ねる。 「繧ソ繧ウ繧ケ縺ゥ縺?〒縺吶°?」 「いただこう。」 「空!こっちにも!一個お願い。」 「では6ついただこう。」  空の胃袋にはすでにマンゴージュース、鳥のささ身、ライスボールなどなどが入っている。  もぐむしゃごくん。  ものの10秒でたいらげやがった・・・こちとら見てて胸焼けしてるってのに。 「ここから北。さらに西へ行く。すると涼しくて過ごしやすい地域に出る。そこを目指そう。」 「うー-ん。ここでも十分涼しいけどなあ?」 「まあ秋だからな。どこに行っても秋ってことはだ。流氷なんかが比較的適温で見られるってことだ。」 「み、見たいの??」 「すごく。」  つまりこの旅で最終目標は流氷だね。ってことか。  シャカシャカ。シャカシャカ。  うん?セリフ・・・圧倒的メキシコ人過多。  虹が出た。いい加減しつこい!  せっかくなので虹にお願いしておいた。 『オーロラが見れますように・・・。』  ――――――――――フレズノ  ここで立ち止まらないで!  看板にはそう書いてあるらしい。 「そらー?そういやさー。私バーべキュウーしてないー。」 「それは仕方ない。道具がないからな。」 「え?あるよ?何のためのリュックだと・・・?」 「いやいや・・・。この旅で歩きまくったのにそんなもんを大事に背負ってたのか。」 「あぁ~・・・?馬鹿にするんだ?ふーん。それはいいけどこっからは空が持つんだからね?」 「???」 「いやならいいんだけど空は女の子より力ないのかー・・・?ふーん?」 「安い。持たざる負えないな。安すぎて。」 「挑発がってこと?」 「うむ。」 「さてと。とりあえず野宿は決定してるにしても食べ物だよ。食べ物。」 「時雨。肉はないか?リュックに調味料が多数入ってた。いい味付けにできそうだ。」 「ないよ?」 「!!」 「ないよ。」 「!?」 「ない。」 「????!!!!!」 「まあ肉はないけど野菜はたっぷり・・・。」 「ふむぅ。野菜か。貸してみてくれ。」 「?。ま、まぁうん。」 「ここにニンジンがある。そして少し穴を掘り、ビニールシート、土の順で盛る。」 「う、うん?」 「さらにロープで罠を張りニンジンで・・・。」  ぴょん!!ぐい!ぶらん。 「と、こうなるわけだ。」 「えぇー?タイミングぅー。」 「まあ。これは極端な例ではあるが・・・。」 「さて、このうさぎをぶら下がったまま・・・。」  しゅっ。しゃっ。しゃっ。  すごい。血が一滴も出ない・・・。 「っと!これで焼いたら肉が食える。」 「肉のための知識量ね・・・。」  空の知識に偏りが見えるがまぁいっか。  ジュ――――。。。。 「空?焼けてるよ?」 「まて。もう一匹くらいとっておこう。保存食だ。」  その情熱をほかに注げよ・・・。  ジュ――――。。。。。  もぐもぐ。もぐもぐ。  ジュ――――。。。。。  む、無言・・・。さすがにって、まて。 「そーらー?野菜食べてないじゃん!栄養だから食べなよ?」 「野菜に含まれる栄養素はおそらくウサギに含まれると思われるが・・・。」 「その理論。日本じゃ通じないから!」 「むむぅ。そうか。なら食べよう。」  空の胃袋に押し込めてやった。  虹・・・。?。そういえば同時に二個とか見てないよね?こんなに多発しててよくできてる。  ―――――――サクラメント  ふぅ。やっとサクラメントだよ・・・。ここでどのくらい北に来たの?シャレではなく。  んんーと?ここまででやく二割?意外といってるけど足腰が限界近い・・・。  地図とにらめっこしつつ買い物を済ませていた。  とりあえず日持ちのするもの・・・と、肉。空は名前の意味を考えればいいと思うの。  さてと、緯度と経度を確かめてっと・・・。バスか。外国のバスなんて乗ったこと・・・。  空をジト目で見た。そういや空にだけ言葉通じてるし・・・。バスくらい乗れる? 「空?バスの乗り方ってわかる?」 「ああ。料金を先払いする乗り物だ。」 「ナイス!バス乗れるなら結構楽かも!」 「うむ。片道2セントらしい。」 「・・・え?」 「む?」 「小銭しかダメなのー??」 「いや両替くらいならできるはずだ。」 「なるほど?」  ぺしっ!  空が手を見てみると一ドル札が握られていた。 「たのんだ!!」 「しかたないか。」  バスに揺られて約3時間半。  ――――――コースト山脈――夜  ふい――。らくちんらくちん。  おっと?虹・・・ではなくオーロラ?  ・・・オーロラ???えっ?オーロラってあの??? 「空・・・。オーロラが・・・。ん、眠くなってきた・・・。」  オー・・・ロ・・・ラ。むにゃ・・・。 『秋!見てみろ。オーロラだ。きっと北極から見てるんだよ!』  オーロラ・・・。すーすー。 『秋は寝ちゃったか。起こさないようにっと・・・。」  パパぁ・・・。むにゃむにゃ・・・。 『もしもし。私だ。ああ。最後の秋の輸送中だ。これで秋が終わる。』  グゥー---・・・。おなかすいたぁ・・・。ん。 『秋。おなかが減ったのかい?大丈夫だ。虹にたくさんあるから今は眠れ。』  むにゃ。すーすー。 『ん?虹の食べ物か。適当に答えてしまった。まあ何とでもなるだろう。』  ――――――――――シャスタ山山頂  がたっ! 「時雨?いつまで寝てるんだ?いい加減起きないと。」 「・・・」  時雨はうなずく。無言で。しかし丁寧に。  苦しくなってきたがとりあえずはバスを降りてっと。  ―――――――ユージン  ゆっくりと下り坂を下っていく。走りながらゆっくりと。  はー。はー。息が白い。おそらくは山頂近くだからだろう。  ざっざっ。  更に下りていく。白い息を感じながら走る。 「時雨。きつそうだが。」  はぁー。はぁぁー-。  初めて自分が肩で息をしてるのを知る。 「くっ。なんていうか。気持ち悪い。」  倒れそうなくらい斜めになる。地面のせいだけじゃない。  実際気持ちが悪くて吐く。 「げほっげほっ。」  自分でもちょっと理解できない。だけど咳き込む。  はぁー。はぁー。ふー。すー。ふー。  横になる。空が青い。なるほど。”空”が青い。  ゆっくりゆっくり。  ぐるんぐるん。  タタタッ。  ・・・あっこれ。酸素欠乏症ってやつだ。  空・・・。 「時雨!?」  視界が曇っていく。どんどんどんどん。  しかしそれは突然だった。 (んぐっ!?)  口に何かが当たる。くちびる?  ・・・空?  空気が取り込まれる。 「ん、」 「時雨!」  昼なのに月が見える。 「はー---。」  起き上がれた。やっと起き上がれた。 「んむむ?」  口に触れたのは確かに口?  空におぶさり下山するころには無事に歩けるようになっていた。  ―――――――ポートランド  ポートランドの岬小屋こちら→ 「ポートランドか。」 「空。来たことあるの?」 「まあ。」 「そうなんだ?」 「この先の岬小屋のおやじにあるものを預けてあるんだがとってきていいか?」 「どぞどぞ?一緒いく?」 「ああ。一緒に行こう。」  少し歩いたところ。岬小屋におじいさんがいた。 「おお。おまえさんは。」 「ああ。預けてたものを取りに来た。」 「ほうほう。これかね?」  おじいさんは鍵を出してきた。 「確かに。」 「?。なにそれ?」 「船の鍵じゃ・・・。古くも新しい船。その名も。”赤城”。例の場所に止めてある。」 「例の場所?」 「ディサポイントメント岬じゃ。」 「あの場所から一歩も動けず一歩も動かず。すなわち体表に土が付いてるだろう。」 「えっ?この近く?」 「そうですじゃ。この海沿いから見える岬。ディサポイントメント岬じゃからのう。」 「ごくろうだった。約700年間またせたな。」 「はいですじゃ。」  そういうと老人は消えていった。 「ここから見える場所がそうだ。いこう。」  ――――――――ディサポイントメント岬  苔のようなむしろ土くれ・・・いや錆の塊にしか見えない塊。  空が昇り梯子をかける。  からんっ・・・。  時雨に登れと伝えて消えた。  登り終えると空がカギを挿した。  ぎゅう――――ん!  ファンが回る音がする。ぎゅんぎゅんぎゅん。  ぎゅるるー---。  ファン?いや・・・。 「時雨。見てくれ。これが赤城だ。」  苔がとれて全容が現れる。  中に水が入り、外へと排出する。すなわち。 「水上戦艦もどき!」  船が勢いよく発進する。  ざー----っ。  あっという間に陸地を後にする。  ざざー---っ。  海だ。久しぶりの潮風が当たる。  ざんっ!ざざー--っ。  ふと見た先にあったもの。・・・オーロラ。  時雨の意識を吸い込んでしまった。  -------------アレキサンダー諸島シトカ 「時雨。いいかげん起きないと。」  ここどこ? 「アレキサンダー諸島だ。」  奥から白衣の男性が出てきた。 「キミが時雨かい?えぇーと日本語で言うと。」  ん?今英語で言ったの? 「キミガシグレカイ?」  やっぱりだ。今英語が分かった。  そのあとたどたどな日本語で質問されたがよく覚えていない。 「ふむ。英語か。スピードなんちゃらっていうのは分かるか?」 「ラーニング?寝てる間に英語を勉強ってやつ?」 「それを疑似体験したんじゃないか?」 「えっと。つまり?」 「時雨が寝てる間英語が飛び交っていたはずだ。」 「つまり、スピードうんちゃらを疑似体験ってこと?」 「うむ。」  っと!集団が目に入る。上に看板が・・・。 『オーロラのコンパス。取れたら差し上げます。』 「空。オーロラだって。やってみる?」 「やれば。」  コンパスを引っ張ってみる。取れない。 「取れないね。」 「ふむ。時雨。虹の奴を見せてもらっても?」 「うん。」  空はコンパスをくっつけて満足したのか降りてきた。  空からコンパスを受けとる。  ”o-rora”  くるくる回っていたコンパスは一点を指していた。  オーロラのコンパス? 「空・・・。これって。」 「時雨!さ・か・な!さ・か・な!」  聞いちゃいない。とりあえずポケットに入れておこう。  ――――――――――――アラスカ湾  コンパスは北西を指している。  つまり少し西を行けばアラスカ湾を横断できるというわけだ。 「時雨?出発か?」 「うん。とりあえずアラスカ湾横断しようかなって。」 「ふむ。」 「じゃあ出発!」  ざーー----ん!  ―――――――海  陸地が見える。遠くの方に。まだここか。 「時雨。コンパス。」 「ああ。落とさないよ。」  一応首からぶら下げとこうか。たしか宝箱にひもが入っていたはず。 「宝箱っと。」  宝箱には紙が一枚。  タヌキの絵。  宝箱には紙だけ。紙を取る。タヌキの絵。  寒いギャグ!!!!!!!!!! 「空?」  天井に空が張り付いている。  空が下りてきた。 「中身は?」 「机。」  机の引き出しに宝箱の中身が入っていた。  親切心でしたのかそれとも悪戯でしたのか。  まあ空もそういうお年頃ってね。  虹が見えていたけどまあ気にしなかった。  ――――――――――――海  下に見えてる波に目をやる。海を切るように波が立つ。  ざざーん。  すれ違うのは漁船それに海賊船。  海賊船にあったら全速前進。そうしないと死ぬ。  前に障害物があっても直進する。そうするしかない。  いままで目の前にそういう障害物があったことはない。  空はそこらへん計算して操縦してるのだろうか? 「空―?操縦変わろうか―?」 「いやいい。それより虹だ。」  虹?空が二センチほど舵を切る。  そうか。虹に引き寄せられてるんだ。 「・・・。」  空の首にコンパスを掛けてあげた。 「時雨?これは確か時雨の形見では。」 「うん。でもいいんだ。必要なのは空だから。」  空のあたまをぽんぽんとなでた。  ―――――――――――海  最近は船長室に入り浸っている。  なんか知らないけどほかの部屋にはエアコンがない。 「虹。」  えぇーと今ので通算十二回!?ま、まあそんなもんだろうと思っておこう。  ―――――――――海 「時雨!陸地だ!」  ―――――――――アリューシャン山脈  陸地についた。ここはどのへんだろうか? 「空?ここどこ?」 「アリューシャン山脈らしい。」  地図を確認する。予定ではコディアック島につくはずだけど・・・。  アリューシャン山脈はコディアックを越えた先?  なぜか島を越えたところについていた。 「で?こっからどう行こうか?」 「とりあえず北へ行こう。」  地図は見てないけどまあいいか。 「じゃあ買い物してしゅっぱ・・・あー---!!お金ないじゃん。」 「ふむ。」  空の手には大きな釣り竿が握られていた。 「ちょっと行ってくる。」  一時間ほどで帰ってきた。マグロよりおおきな魚を背負って。  さすがに疲れたのか船に載せるときには息切れしていた。  ――――――――――レイク・クラーク国立公園  虹。  ――――――――アンカレッジ  ざざーーーん。ざー--ん。がががががー--!!!!!!  がががががー? 「時雨!座礁した!」  外を見るとオーロラが・・・。  オーロラが・・・。  意識をつかんで連れ去っていった。  ――――――――――――――――――――――キング島 「今日も平和だなー。」  みんなが空を見上げている。  ざー----------ん!!!!!  雨?いや・・・。  港に空からなんか降ってきた! 「ふぅー死ぬかと思った。」  空が港に降りる。 「時雨はまた寝てるのか。」  オーロラか。もう少しでたどりつくな。 「旅人か・・・??」 「イエス。」 「どこに向かってるんですか?というか今空から・・・。」 「北極を目指してる。」 「北極?確か西の方の・・・。」 「そうだ。北極だ。」 「どうやって海を渡ってきたんだ?」 「オーロラのコンパスを使って。」 「旅の人・・・それをどこで?」 「シトカだが?」 「ふむ・・・。シトカといえばむかし息子が旅で・・・。息子は元気でしたか?」 「ああ。たいそうな。」 「そうですか・・・。今度こちらにも顔を出すように言っておいてくださいますか?」 「会えたらな。」 「オーロラといえば石碑がありましてな。こちらです。」  オーロラの根本にIZINの鍵を供えよ。  オーロラには世界の半分が眠っている。 「ふむ。」  時雨ならわかるかもしれないが、まあ起こすまでもないか。 「出発する!」  ざー-------ん!!  北西へ。旅の最後へ。  ―――――――――イースト岬 「時雨!起きろ!」 「ん、朝?ふぁー--・・・。」 「コンパスを見るんだ。」  コンパスはくるくると回っている。  くるくる。くるくる。くる?  つまり虹と同じなら・・・?上?  オーロラが耀いている。雪もちらほら。  ここはもう北極。北の果て。 「降りてみよっか。」  梯子を降りる。 「よっと。」  オーロラの根本には鍵穴があった。 「オーロラの鍵なんて・・・持ってないよ?」 「IZINの鍵。」 「いじ・・・なに?」 「オーロラの根本に供えろって。」  しゃんしゃんと雪が降る。NIZIの鍵を透かして見る。  IZIN?虹の反対・・・?  NIZIの鍵を置いてみる。  ざー------ん!  天からバケツをひっくり返したような水が降ってくる。  尽きることのないまるで滝のような。  上・・・。オーロラは空より高い場所から水を吐き続けている。  ぴちゃん。  収まった。のだが・・・何かある。箱? 「空、箱が・・・。」  空は箱を開けた。  それは  まるで  世界の終わりの様に。  降り注ぐ。  もう一つの世界が。  ・・・空! 「時雨。終わらない秋は終わったんだ。だからもう。」 「うん。帰ろう。でもこっから日本に船では・・・。」  船は陸地を上がっていた。 「???」  船に尾翼なんてあったっけ? 「帰る。」 「待ってよ空!」  船に乗り込むとエンジンをかけた。  ぎゅるるるる。  船の排出口から尾翼に空気を吐き出す。  この船はそう、赤城。 「空中を走る船!」  そういうと船は空へめがけて飛んだ。  そう。日本へ向けて。  ――――――日本  春か。ずいぶん長い秋だったな。  時雨は成人の年齢になっていた。  空も育つのが楽しみで仕方ない。  というのも空は私が育てることになったからだ。  この家から始まった旅。アメリカ横断。そして世界は”一つだった”。  もとから一つだったように。そう、あの箱を開けたからかはわからない。  ”そして世界は丸くなる”地球。  完
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