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「え? 雨?」
小学校の体育館に並べられたパイプ椅子に腰掛けて入学式のはじまりを今か今かと待っていると私の左隣に座った旦那が不思議そうに呟いた。
「違うよ。この体育館、なんか晴れたりするとパチパチ音がするの」
私は懐かしい母校の体育館を見回し、答えた。
今日、息子は私も出たこの小学校に入学し、小学生となる。
息子が生まれて早6年・・・。
長いように感じるその歳月は本当にあっという間だった。
そして、この小学校で過ごす6年もあっという間なんだろうと思うけれど、息子たちにとっては長い長い6年に感じるのかも知れない。
子供だった私がそう感じていたように・・・。
だけれど今、思い返せばその6年はあっという間だった。
なんだかことわざで言う『喉元過ぎれば熱さを忘れる』みたいな・・・。
「へぇ~・・・」
気の抜けた旦那の返事に私は『うん』とだけ返事を返し、目を閉じた。
目を閉じるといろいろなことが思い出され、聞こえるはずのない音や声が聞こえてきた。
廊下を歩いたり走ったりする音に教室のドアを開閉する音。
ランドセルに付けられた熊よけの鈴が鳴る音にチョークが黒板の上を滑る音。
誰かが椅子をカタカタと揺らし、勢い余って後ろにひっくり返った音・・・。
楽しそうな笑い声や話し声、ふざけ合う声・・・。
時々は泣き声も・・・。
懐かしいと感じるくらい・・・切ないと感じるくらい、いつの間にか月日は流れていた。
思ってもみなかった。
自分が小学生時代を懐かしいとか切ないと感じる日がくるなんて・・・。
「はじまるね」
私のそんな思考を遮ったのは旦那だった。
私の思考を遮った旦那は三脚に取り付けたビデオカメラを調整し直していた。
司会の先生の声がマイクを通して響くと会場はよりシーンとなり、天井から聞こえるパチパチと言う音だけがよく響いていた。
その雨音に似た音を飲み込むように拍手が起きた。
息子を含めた新一年生はまだまだそわそわしていて身に纏った真新しい制服はどの子も大きめでそれが妙に微笑ましかった。
式の間ずっとパチパチと音がしていた。
子供たちの入学を祝うようにパチパチと・・・。
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