プロローグ

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 社長が顔を歪ませながら、なにかを言おうとする。  しかし一ノ瀬はその言葉を待つ事もなく、アサルトライフルを投げ捨てると、ホルスターのハンドガンを引き抜き……。 「チェックメイトだ。 わりいなおっさん」  バンッ。  劇鉄を引くと、男の眉間に銃口を当て、引き金を引いたのである。  そして同時に鳴る、けたたましいラッパの音。  公式で決められた、決着がついた時の合図だ。 「そこまで! 今回のウォーゲームの勝者は逸見工業株式会社! MVPはもちろん……一ノ瀬遥希選手だぁぁぁ!」  撃たれた社長が腰をぬかす中。  ドローンから発せられた女性の声が試合終了を知らせる。  だが一ノ瀬はその場を去るだけで、会社のアピールどころか勝利のポーズすらもしない。  ただただ数多の放送ドローンから送られる声援を、背中で受け取るだけだ。  その声援の中で、一際大きな声がある。 「す、すっげえぇぇ! さっすが一ノ瀬さんだぜ! カッコいいー!」  それこそが、この物語の主人公。  燃えるような紅い髪に、深紅の瞳を持つ熱い魂を身に宿す少年。  斑鳩高校二年の『藤堂焔李(えんり)』である。  
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