4人が本棚に入れています
本棚に追加
藤堂焔李
「また! またやってくれました、一ノ瀬選手! 今年も彼の実力は健在のようです! 今回にて通算500連勝! いつになったら彼を打倒する選手が現れるのでしょうか! 誰かいい加減彼を倒してくれっ! 我こそはという者は、下記のホームページから……」
2037年現在。
20年後半でも進歩を見せていた電子機器界隈だったが、最近になって更に急成長を見せ始めた。
携帯機器の代わりに、とあるVARデバイスが台頭し始めたのだ。
その名も、ナノデバイス。
耳裏の神経にナノチップを繋ぐ事で、電話、SNS、アプリなどの様々な機能が脳内、または肉眼で使える次世代型携帯機器である。
第一世代が発売されて今年で約六年経った今、旧世代機器となったスマートフォンを使う物好きはそうはいない。
片田舎に住む少年。
斑鳩高校二年三組、藤堂焔李もその一人。
「うおおおお! やっぱ一ノ瀬さんはすげえぜ!」
今日も今日とて焔李は学校の屋上で寝転がり、青空を背景に広がる仮想モニターで、一ノ瀬遥希の試合に胸を踊らせている。
「いやぁ、やっぱ一ノ瀬さんはマジ凄いよなぁ! 500連勝だぜ、500連勝! 普通は出来ない事もやってのける! それが一ノ瀬さんの魅力だよなー!」
言わずもがな、焔李は一ノ瀬の大ファンである。
ファンクラブは当然ながら入会済み。
自室には所狭しと一ノ瀬遥希のグッズやポスターがズラリ。
家族だけでなく、友人からも呆れられる程。
今だって本来ならば、授業に出ていなければならない。
しかし彼にとって一ノ瀬の試合は何よりも優先すべきイベント。
逃す筈が無かった。
とはいえ、いつもの事なので教師も放置気味。
担任はたまに注意くらいするものの、基本的にはノータッチだった。
義務教育ではないのが余計に拍車をかけている。
だが、ただ一人。
同じクラスのある女子生徒だけは、彼を見捨てたりはしていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!