藤堂焔李

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藤堂焔李

「また! またやってくれました、一ノ瀬選手! 今年も彼の実力は健在のようです! 今回にて通算500連勝! いつになったら彼を打倒する選手が現れるのでしょうか! 誰かいい加減彼を倒してくれっ! 我こそはという者は、下記のホームページから……」  2037年現在。  20年後半でも進歩を見せていた電子機器界隈だったが、最近になって更に急成長を見せ始めた。  携帯機器の代わりに、とあるVARデバイスが台頭し始めたのだ。  その名も、ナノデバイス。  耳裏の神経にナノチップを繋ぐ事で、電話、SNS、アプリなどの様々な機能が脳内、または肉眼で使える次世代型携帯機器である。  第一世代が発売されて今年で約六年経った今、旧世代機器となったスマートフォンを使う物好きはそうはいない。  片田舎に住む少年。  斑鳩高校二年三組、藤堂焔李もその一人。   「うおおおお! やっぱ一ノ瀬さんはすげえぜ!」  今日も今日とて焔李は学校の屋上で寝転がり、青空を背景に広がる仮想モニターで、一ノ瀬遥希の試合に胸を踊らせている。 「いやぁ、やっぱ一ノ瀬さんはマジ凄いよなぁ! 500連勝だぜ、500連勝! 普通は出来ない事もやってのける! それが一ノ瀬さんの魅力だよなー!」    言わずもがな、焔李は一ノ瀬の大ファンである。  ファンクラブは当然ながら入会済み。  自室には所狭しと一ノ瀬遥希のグッズやポスターがズラリ。  家族だけでなく、友人からも呆れられる程。  今だって本来ならば、授業に出ていなければならない。  しかし彼にとって一ノ瀬の試合は何よりも優先すべきイベント。  逃す筈が無かった。  とはいえ、いつもの事なので教師も放置気味。  担任はたまに注意くらいするものの、基本的にはノータッチだった。  義務教育ではないのが余計に拍車をかけている。  だが、ただ一人。  同じクラスのある女子生徒だけは、彼を見捨てたりはしていなかった。
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