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「おーい、志波楓ー。 藤堂がまた居ないんだが、お前なんか知らんか? 嫁だろ?」
「誰が嫁ですか、誰が! あたしと焔李はただの幼馴染みですから!」
茶髪を小さいポニーテールにして纏めている、活発な女の子が気だるげな担任に吠える。
そう。
この、耳まで真っ赤にして怒る彼女こそが『志波楓』。
親以外に唯一、焔李を気にかける幼馴染みである。
「焔李、あんた今どこに居るのよ!」
「いっ!」
何度もかかってくる電話から逃げられないと悟った焔李が、渋々耳裏を指で押さえた直後。
目の前に現れた仮想モニターに、楓のアイコンが表示され、耳をつんざくような怒声が響き渡った。
「まったくあんたは! サボるなって何度言ったら分かるのよ! あんまり酷いとテスト勉強、手伝ってあげないからね! 聞いてるの!?」
「へいへい、すいませんねー」
自分の鼓膜を守る為、両手で耳を塞ぐがそれでもまだ聞こえてくる幼馴染みの声に、焔李はめんどくさそうに答える。
すると、その言い方にカッとなったのだろう。
「この……ほんとムカつく! どうせ屋上でしょ!? 今から行くから動くんじゃないわよ、分かったわね!」
「げっ」
楓は通話を終えるなり、椅子を倒さんばかりに立ち上がる。
その姿を見た友人二人がニヤニヤと。
「楓、どったの? また旦那と喧嘩~? ほんとアツアツだよねー」
「あーあ、うちらにも彼氏出来たらなぁ。 楓が羨まし~」
言われ、楓の顔がまた真っ赤になる。
が、急がないと逃げられかねないと焦った楓は。
「だから違うってば! そういうんじゃないからね、もう! じゃああたし急ぐから!」
とだけ言い残し、ダッシュ。
教室から飛び出していった。
そんな楓を見送った二人は手を振りながら、笑い合う。
「あんな乙女な顔されても、説得力無いよねー」
「だよねー」
去り際にニヤニヤと嬉しそうな表情を見せていた友人を思い出しながら。
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