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バタンッという音と作業台を揺らす衝撃を受け、焔李は咄嗟に発信源を見る。
楓の指定席である、部室入り口側に位置する左向かいを。
そこでは何があったのか。
楓が作業台に突っ伏していた。
耳を真っ赤にさせて。
(俺と楓の仲ってなに!? どういう意味で言ったの!? ま、まあ焔李の事だからどうせ大した意味も無いのかもだけど……。 でもでも、もしかしたらそっちの意味もあったり……。 もー、分かんないよ~!)
(なんだあいつ。 急に頭抱えて唸りだしたけど、生理かなんかか?)
自分のせいでああなったのも露知らず。
焔李は楓をチラチラ見ながら、黙々と銃口内部の細かな埃や汚れを拭き取っていく。
「ふぅ、こんなもんか……。 一回掃除すると止まんなくなるんだよなー。 お陰でピッカピカだぜ!」
クリーニングを開始して、およそ二十分。
面倒臭がりの割に、意外と凝り性な性格が功を奏したようだ。
焔李の目の前には、銃口だけでなく、新品までとは行かずともそれなりに綺麗になったパーツが転がっている。
「焔李ってさ、ほんとモデルガン好きよね。 そのくらい部屋の掃除と勉強もして欲しいんだけど」
「うっせえな。 楓はどうなんだよ、ちゃんとメンテしてんのか? まっ、お前は俺よりも後に始めたからなー。 俺みたいな完璧な出来には────」
と、焔李が得意気に天狗になっていると、楓が組み上げたハンドガンの撃鉄をガチャン。
正確な狙いをつけられるアイアンサイト。
射撃の反動と照準のブレを抑える、改良グリップ。
他にもスプリングガイドなど、見えない部分にも手を入れたカスタムハンドガン。
銀色が眩しい【シルバースライド・カエデカスタム】をどや顔で見せびらかす。
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