姉からの助言

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「やっと俺の事紹介してくれるの~」 「待たせてごめん」 「全然いいよ~。寧ろ、急かしてごめんね?」 気にしていないことを気にして謝ってくる。 そんなことはどうでも良いんだ。寧ろ有難かったくらいなんだから。 「大丈夫。おかげで少し吹っ切れたから」 「そうなの?」 「うん。」 「なんかすがすがしい顔してるもんな。良かったわ」 少し嬉しそうな顔をして隣を歩く俺の恋人。 今気が付いたけど、いつの間にか車道側に此奴が歩いている。 些細な事に気を遣ってくれる此奴が俺は好きだ。 「気が付いてたの?」 「俺と付き合ってからずっとなんか困った顔してたから心配だったんだ」 「心配させてごめん」 申し訳なくなって謝ると気にすんなと言って笑ってくる。 「まぁ、今は前みたいにめっちゃ良い顔で笑ってくれてるから俺は嬉しいよ」 「俺と、お前との関係、周りに言っていいよ」 「...え?いいの?ガチ?無理してない?」 「良いしガチだし無理もしてない」 「まじもんのまじ?」 そこまで疑ってくるのかと思って驚いた。 にしても姉ちゃんのおかげで久しぶりに驚いた顔の此奴を見れたな。ありがたやありがたや。 「まじもんのまじだよ。なに?そんなに可笑しい?」 「いいや~?吃驚しただけでめっちゃ嬉しいよ。ありがとね」 「此方こそいつもありがとう」 「え、本当にどうしちゃったの」 「は?」 「いつもなら絶対言わないこと言いまくってる自覚ある?」 姉ちゃんみたいにイラつく一言を言ってくるところだけは気に食わないなぁ。 「何?嫌だったの?」 「全然?寧ろの寧ろ幸せ」 「ならどうでも良いじゃん」 「どうでもよくない」 「吹っ切れたって言ったじゃん。そういうこと」 「なんか知らないけど本当に良かったわ」 俺の隣を歩いている奴は久し振りに本気で喜んだ時の顔をしている。 ついこっちまで嬉しくなってしまうほど。 「ここだよ、俺の家」 「ここかー。久しぶりって言うかお前が中学の時の転校から来たことないな」 「あー、あの頃来てたか、お前も」 いじめられていた時の唯一の親友でもあった。 此奴の存在に何度も救われた。そんな此奴に何度も冷たく当たっていたのは俺だった。姉ちゃんが居なかったら此奴と今一緒に居る事は出来なかっただろうし、此奴が俺を諦めていたら俺は人を信じることを諦めていたかもしれない。 「おん。」 「入って」 「はーい、お邪魔しまーす」 「あらいらっしゃい」 言えにはいった先には母さんと姉ちゃんが居た。 母さんは嬉しそうな顔。姉ちゃんはいつもの仏頂面ではなく、優しく見守ってくれている時の優しい笑みを浮かべていた。 この笑みに気が付く人間は俺だけだけど。母さんも父さんもいつも少しだけ上がった口角に気が付いていない。 「連れてきたよ。俺の、恋人」 「あらあら、こんなに良さそうな人が恋人なの?あんたに丁度良さそうね」 母さんは心底嬉しそうに俺の恋人を見つめる。 姉ちゃんは周りが気が付かない程度のドヤり顔を見せてくる。きっと、私の言ったとおりだっただろうと思っているのだろう。何時もならうざいと思うだろうけれど、今日の俺はそんな姉ちゃんの様子を見てありがとうと言う言葉が飛び出していた。姉ちゃんは少し驚いた顔をして首の後ろを掻いてなにキモいと言ってきた。 照れていたり恥ずかしかったりした時に首の後ろを掻く癖があることも、俺はちゃんと知っている。ずっと一緒に居たのだから。喧嘩もして、互いに貶しあって高めあって、これまでやってきたのだから。 「母さんと恋人くん二人っきりにしておこうぜ」 「なんで?」 「上手くいっているみたいだし」 「あー、そうすっか」 仲良さげに話している二人を見て俺は嬉しく思った。 彼の恋人であることも、彼女の息子であることも、誇らしく思えた。 「私の彼女、どんな奴だと思う?」 「唐突になんだよ」 「教えてやりたくなってさ」 「はぁ?」 姉ちゃんに連れられて姉ちゃんの部屋に入って早々の話がこれだ。 今迄の会話で脈絡がないのだが。強いて言うのであれば恋人関連か。 「なんだよ。お前が仲間外れにするなって言ったから教えてやろうと思ったのにさ。嫌なら教えないよ」 「あ~そういう事か。じゃあ聞きたい」 「じゃあってなんだ、じゃあって」 「いえ、聞きたいです!!」 「よろしい」 姉ちゃんは基本的に爆笑などしたりしない。面白がっていても笑い転げたりしない。ただ、1人でくすりと笑うだけだ。 顔に表情を出さない姉ちゃんは、顔が整っていることもあって高嶺の花だと言われていた。そんなことは決してないのに。 1人にされていることも本当は嫌だと俺に言ってきたことがあった。 我儘いうほどでもないし話し掛けたら仲良くしてくれるから良いけどと言っていたが、あれは只の強がりだ。それくらいはわかる。 俺の家に友達が来て姉ちゃんにあった時、綺麗だとか高嶺の花だ云々を後々になって嫌というほど言いまくられていた。 そんな事は全くないのに。いつも孤独を寂しがっていたのに。そう思いながら俺は何もできなかった。 「私の恋人はね、少しお前に似ている奴なんだ。」 「へ?」 唐突過ぎて驚いた。 俺に似ているとはどういうことなのか、全くと言っていいほどに分からない。 それに、そんなことどうでも良い気がする。 どういう事なのか、次の言葉を待った。
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