4人が本棚に入れています
本棚に追加
遊具がたくさんある大きな公園なのに、ちっとも楽しくない。ママは陽介に付きっきりだし、陽介がママを引っ張って林の方に行ったっきり戻ってこないから、私はずっと1人だ。
陽介だって遊具で遊ぶ時もあるけど、今日は人が多いから、林の中で木の枝や小石を拾ったり、穴を掘ったりして遊ぶことにしたらしい。だけどどこで気が変わって、滑り台やブランコに割り込んで乗ろうとするか分からないから、ママは陽介から目を離すことができない。
私は枝にも石にも興味ないから、1人で遊具で遊んでいる。それに1人で遊んでいたら、知らない子が「いっしょに遊ぼう」て、言ってくれるかもしれないし……
「ひなちゃん! ひなちゃん!」
林の横のブランコを1人でこいでいたら、ママが大声で私を呼んだ。見ると、ママが私を手招きして呼んでいた。
「どうしたの? ママ」
ブランコを飛び降り、ママの側にかけ寄る。
「ママね、おトイレに行きたいの。ちょっとだけ、陽介を見てあげてくれない?」
「えーっ!」
叫んだ後にはっとして口を押さえたけど、遅かった。ママは困ったような顔をして「ごめんね。楽しく遊んでたのに……」と言った。
だから私は、手を振りながら明るい声で言う。
「トイレじゃ仕方ないよね! いいよいいよ、行っといでよ! 私、もうすぐ4年生になるんだよ! 少しくらい陽介のめんどうも見られるよ!」
本当は、陽介のめんどうなんか見たくない。だけどそう言ったら、ママが本当に困ってしまうのを知っているから、そう言うしかない。
ママは私の返事を聞くと、ほっとした顔になって「ほんと、すぐ戻るから。いつもごめんね」と言って、トイレへ走っていった。
ママはいつも、謝ってばかりいる。周りの人だけじゃない、私にも謝ってばかりいる。
悪いのはママじゃなくて、陽介なのに……
ママに謝られるたびに悲しくなって、ますます陽介が嫌いになった。
最初のコメントを投稿しよう!