私の弟

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 遊具がたくさんある大きな公園なのに、ちっとも楽しくない。ママは陽介に付きっきりだし、陽介がママを引っ張って林の方に行ったっきり戻ってこないから、私はずっと1人だ。  陽介だって遊具で遊ぶ時もあるけど、今日は人が多いから、林の中で木の枝や小石を拾ったり、穴を掘ったりして遊ぶことにしたらしい。だけどどこで気が変わって、滑り台やブランコに割り込んで乗ろうとするか分からないから、ママは陽介から目を離すことができない。  私は枝にも石にも興味ないから、1人で遊具で遊んでいる。それに1人で遊んでいたら、知らない子が「いっしょに遊ぼう」て、言ってくれるかもしれないし…… 「ひなちゃん! ひなちゃん!」  林の横のブランコを1人でこいでいたら、ママが大声で私を呼んだ。見ると、ママが私を手招きして呼んでいた。 「どうしたの? ママ」  ブランコを飛び降り、ママの側にかけ寄る。 「ママね、おトイレに行きたいの。ちょっとだけ、陽介を見てあげてくれない?」 「えーっ!」  叫んだ後にはっとして口を押さえたけど、遅かった。ママは困ったような顔をして「ごめんね。楽しく遊んでたのに……」と言った。  だから私は、手を振りながら明るい声で言う。 「トイレじゃ仕方ないよね! いいよいいよ、行っといでよ! 私、もうすぐ4年生になるんだよ! 少しくらい陽介のめんどうも見られるよ!」  本当は、陽介のめんどうなんか見たくない。だけどそう言ったら、ママが本当に困ってしまうのを知っているから、そう言うしかない。  ママは私の返事を聞くと、ほっとした顔になって「ほんと、すぐ戻るから。いつもごめんね」と言って、トイレへ走っていった。  ママはいつも、謝ってばかりいる。周りの人だけじゃない、私にも謝ってばかりいる。  悪いのはママじゃなくて、陽介なのに……  ママに謝られるたびに悲しくなって、ますます陽介が嫌いになった。
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