4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
ママがトイレに行っても、陽介は変わらず木の根元を掘っていた。何が楽しいのか分からないけど、それはかなりの深さになっていた。
ふと見ると、さっき私が乗っていたブランコには、他の子が乗っていた。小さな女の子で、お母さんに背中を押してもらってとても楽しそうにしている。
陽介なんか、いなくなればいいのに……
何度そう思っただろう。
陽介には、常に誰かが付いている。外はもちろん、家の中でも、誰かがずっと見守っている。
一方私は、結構ほったらかしにされている。
「陽菜乃は本当に、しっかりしているね」
「陽菜乃は1人で大丈夫よね?」
そう言われるようになったのは、いつからだろう?
小学校に上がってからは、先生にも「しっかりしてるね」「えらいね」と、言われるようになった。
「もう2年生だし、1人で行けるよね?」
初めてのおつかいは、おばあちゃんの家の近くのスーパーだった。少し怖くてどきどきしたけど、言われた物をちゃんと買って帰れた時は、すごく誇らしかった。
「さすがね、ひなちゃん。賢いねー」
「ひなちゃんは、しっかりしてるねー」
おばあちゃんは褒めてくれるけど、私と遊んではくれない。ずっと陽介の側に付いていないといけないから。
陽介のよく分からない遊びにはにこにこ付き合って、陽介が物を散らかしたら「散らかしちゃダメよ」て優しく言うだけで、絶対に怒らない。私が同じことをしたら、絶対怒るに決まってる。
おばあちゃんはきっと、陽介だけが可愛いんだ。
陽介がいなければ……
あんな風に、ママに背中を押してもらってブランコに乗れる。滑り台だって、スライダーだって、一緒に滑ってくれる。
きっとパパもママも、謝ってばかりじゃなくなる。
おばあちゃんだって、私と遊んでくれるかもしれない。もっと私の話を聞いてくれるかもしれない。買い物だって、一緒に行ってくれるかもしれない。
陽介がいなければ……
陽介がいなければ……
陽介がいなければ……
最初のコメントを投稿しよう!