第四章 悪魔の企み

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「……そんなの、どっちも大事に決まってるでしょう? 貴方達は二人共、私の大事な子供なんだから」    二人の子供の頭を、女性は優しく撫でる。 「ちっ、何でだよ……僕が、お母さんの本当の子供なのに」    不満げに頬を膨らませる男の子を、女性は叱る。 「こらっ、そんな事を言うんじゃないのっ! ……血の繋がりなんて、関係無いんだから」 「よ、良かった……お母さんは、僕の事も大切なんだね」    瞳を潤ませる、寂しそうな顔の少年に、女性は少し慌てた様子で返事する。 「あ、当たり前じゃない……貴方だって、この子と同じ様に愛しているわ」    そんな親子の光景を少年が眺めていると、アガレストの声が彼の脳内に響いてくる。 「捨てられていた我を、お母さんが拾って実の子の様に育ててくれていたんだよ。だけど、お母さんの実の子は、自分に注がれていた親からの愛情が半分に減った様な感覚を抱き、我を嫌っていたよ……それでも我は、実の子と同じ様にお母さんが我を愛してくれているんだと信じる様にしていたから、寂しさと孤独を感じながらも幸せだったよ。それも、あの悲劇が起きるまでの話しだけどね――――」    アガレストが語り終えると、目の前の光景がガラッと切り替わった。広々とした店内の中、激しく燃え盛る炎から人々が逃げ惑っている。  そんな大災害の恐ろしさに、生唾を呑む少年の視界に、スローモーションであの親子の様子が流れてくる。
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