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第三章 復讐の瞬間
深々と雪降る、教会の中で白いタキシードに身を包んだ青年が、安らかに眠りについていた。
そんな、目覚める事の無い青年の冷え切った体を必死に揺さぶり、ウエディングドレスに身を包んだ花嫁が大粒の涙を流している。
「そ、そんな……どうしてよ起きてっ! グスン……これから私達、ここで永遠の愛を誓うんでしょ?」
悲しみに暮れている花嫁の前へ、羽を上下に動かしながらアガレストがやって来た。
「ねえ、そこの君……死にそうな顔をしているけど、大丈夫―?」
「……あ、貴方は? もしかして、神様?」
目を丸くさせる花嫁に、アガレストは笑いながら答える。
「ククッ……君も、なかなかのお馬鹿さんだねー。愛の塊の様な存在である神が、こんなおどろおどろしい姿をしている訳が無いだろ」
「それなら……貴方は一体、何者なの? ……死神とか?」
「死神……か……惜しい様で惜しくない微妙な回答だねー。確かに我は、人から命を奪う事が出来るが、それとはまた別の存在……そう、我は悪魔さ」
目の前を楽しそうに浮遊するアガレストを睨みつけ、花嫁は儚い瞳に殺意を宿す。
「あ、悪魔ですって? 貴方ね……私の愛する彼の、命を奪ったのは」
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