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「クククククッ……君は、己が地獄へ落ちる様な人間ではないと、本気で思っているのかい? 君は自分の幸せを守る為に、平気で人を不幸にした……どこかの誰かが苦しんでいるというのに、笑って生きていたんだ。まあ、これは人間の本質だから、君だけが該当する訳では無いのだけれど……そんな君には、地獄がお似合いだろう?」
次々と飛んでくる少年の拳を軽々とかわしながら、アガレストは怪しい瞳を光らせた。そして、少年の腕を掴み、アガレストは彼に顔を近づけていく。
「せっかくだ……君を地獄へ送る前に、我の秘密を教えてあげよう……さあ、我の瞳の奥をしっかりと覗き込みなさい」
力強く腕を掴んでくる青白い手を振り解く事も出来ず、少年はアガレストの言う通りに、二つの不気味な目玉を見つめる。すると、そのどこか悲しげな瞳に吸い込まれる様にして、少年の前に映像が広がった。
二人の幼い子供が、ソファーに座る母親に抱きついている。
「ねえ、お母さん……僕かこいつのどっちが大事?」
母親に顔が似た男の子が、彼女に顔をすり寄せてそんな質問をする。
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