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二人の子供が火に囲まれており、母親がそのうちの一人の手を掴むと、その場から全速力で走っていく。
「うわーーーーっ! 行かないでよお母さーーーーんっ! どうして……どうしてーーーーーーーっ!」
怒りや悲しみ、絶望と恐怖が混じった顔を涙で濡らし、取り残された少年は去りゆく母親に手を伸ばしながら、炎に包まれ消滅した。
その残酷な光景に、少年は酷くショックを受けている様子だ。何も見えなくなり、見慣れた自室に包まれてから、少年は驚きの声を上げる。
「う、嘘……まさか、悪魔君がこんな辛い死に方をしただなんて、思いもよらなかったよ……」
「あれだけ、僕を愛しているって……宝物だって言ってくれたのに、僕はあの日に簡単にお母さんに裏切られ見殺しにされたんだよ。人間の本性は、危機的状況で現れる様だね」
純な悲しみの雫を目から零すアガレストに、少年は言う。
「……悪魔君のお母さんが、悪魔君を愛していたのはきっと事実だよ。お母さんが君にくれた言葉だって、嘘偽り無いはずだ……ただ、あの時は、二人の子供が別の場所で火に囲まれていたから……その、どうしてもまずは我が子から助けちゃったんだよ」
「けど、お母さんは、どっちも等しく愛していると言っていた……それなのに結局、実の子を選んで我を見捨てたんだ……だって、二人を心から大切に思っているなら、あんな決断はしなかったはずだからね」
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