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アガレストの発言に、少年が言葉を失っていると、彼は再び口を開く。
「だから……だから我はね、愛されて幸せそうにしている人間が、許せないのさ。大切な人を亡くして、不幸のどん底へ突き落される人間を眺めるのが楽しくて仕方がないんだよ」
「でも……それならどうして、悪魔君は死者蘇生をして人間を助けたりするの?」
少年がそう尋ねると、アガレストは気味の悪い笑みを浮かべた。
「クククククッ……我は別に、人間を救う為に人間とこんな取引をしていた訳ではないよ。自分の愛する者の為に、人間は本気で他人の死を望んでしまうものだ。この取引を我が持ち掛けた場合、人間は皆必ず他人の死を選ぶ。それも、数秒も経たぬ僅かなうちに簡単にね……人が死に、我が彼らの愛する者の蘇生を繰り返す限り、この悲劇は永遠に連鎖される。そうして、我は人間の苦しみを密にして生きている訳さ」
「き、君……自分がどんな酷い事をしているのか、分かってるの?」
「人間にそんな事を、聞かれたくはないけれど……君さ、真の悪魔の正体を知っているかい?」
「し、真の悪魔って……どう考えても、君しか居ないと思うけど?」
恐怖で体を震わせながら少年がそう答えた直後、温かな電球が不自然に点滅し出した。
「クククッ……我は悪魔だと名乗っているけれど、正しく言えば未浄化霊。人間に害を与えるという点で言えば、悪霊の類だろうね。真の悪魔は、君のとても身近にわんさかと生息している。そして、君もまたその一員さ」
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