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「当然ですっ! 子供の為なら、なんだって犠牲にしますから……なので、早くこの子を目覚めさせて下さい」
「ククッ……いーよー。はーい……これで、満足かなー?」
そう言って、アガレストは少女の亡骸に手をかざした。その途端、少女は上体を起こし、きょとんとした様子で辺りをきょろきょろと見渡す。
「あ、あれっ? 何で私、生きてるの?」
「ああ、亜矢加……亜矢加――っ! 戻って来てくれて、ありがとう……お母さん、貴方無しでは生きていけないわよー」
状況の理解が出来ていない娘を、女性は泣きながら強く抱きしめた。
「お母さん……私、死ねなかったんだ……」
生きている事に絶望した様子の娘の頭を、母親は大きな愛で包み込む様に優しく撫でる。
「お母さん、亜矢加が一人で戦っている事に気づけなかったのよ。ごめんね亜矢加……もう貴方に二度と、死にたいだなんて思わせない様に、お母さんがこれからはずーっとずーっと亜矢加を守るからね」
涙を流して互いに抱き合う親子を、アガレストはどこか悲しげな瞳で見つめていた。
「これは――――罪だよ」
そう呟き、悪魔は床へと潜ると姿を消したのだった。
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