雨音が響いていた。

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ずっと、ずっと一緒にいた。君と私の、二人だけだった。 これからも、そうだと思っていた。 君と私は、物心ついた時から一緒だった。 「大きくなったら結婚しようね。」 幼き日の私はそんな可愛らしい約束を、本気にした。 きっと君もそうだろうと、根拠もなく思っていた。 小中は同じなのはわかるけど、高校もなのは何故だと思う? 周りは運命だ、なんて冷やかしを言っていたけれど。 君が遠くの私立に行くのを知って、頑張って両親を説得したんだよ? うざい幼馴染でごめん。 でも、どうしても、どうしても、君と居たくて。 私は君が好きで、君もそうだろうと勝手に思っていた。 …いや、本当はわかっていた。 君が実は密かに人気があることも、 君が私を妹のようにしか思っていないことも。 知らないふりをして、この時が止まればいいのにと、 世界が2人だけならいいのにと、 帰り道、君の横顔を眺めながらそう思った。 ある日、君は言った。 「俺、告白されたんだ。 okしてもいいのかな…?」 知ってるよ。学年1可愛いって噂のあの子でしょ。 「いいんじゃない?」 「でも…。」 「大丈夫。一人で帰れるよ。  …だって、ずっと好きだったんでしょう?」 君の耳まで赤くなる。 きっと私じゃ、君にそんな顔はさせられない。 あーあ、かないっこないなあ。 翌日の帰り道は、駅まで少し遠回りをした。 君と、君の彼女が、一緒に帰るのを見る勇気が無かったから。 意気地無しだなあ、ほんと。 空を見上げると、雲がかっていて星の一つも見えなかった。 昨日までは、ずっと月が綺麗だったのに。 笑っちゃうなあ…。 おめでとう、好きだった人。
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