才能の管理人

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 2人は病室の扉をすり抜けると、滑る様に廊下を移動した 「先程の続きですが、タネは必ず開花するとは限りません。なので、今の老人の様に未開花の状態のタネが埋め込まれたままの歯車が、亡くなると同時に抜け落ちるんです」 「なるほど。未開花のタネかぁ」 「そのタネを回収し、次のヒトの中に入れるのが私たちの役目です」 「じゃあ、俺たちがヒトの人生を左右できるわけっすね」  調子に乗った悪ガキの様な口調で話す1人に対して、呆れた口調で言葉を返す 「確かに、私たちが今から入れに行く歯車によってそのヒトの人生が決まると言っても過言ではないかもしれません。ところで、あなたは何故、私たちの次の目的地がわかるか理解していますか?」 「あー そう言えばなんでですかね」  1人が一瞬鼻で笑った後、少し顔が歪む 「私たちが今現在何も考えずに次の目的地がわかっているのと同じように、才能のタネを埋め込まれたこの歯車を体内に入れられたヒトは、必然とその才能が開花する様に生きようとする。しかし、開花のトリガーが何なのかはわからない」 「……」 「本能的にタネを開花させたいと思うけど、開花の仕方がわからない、だからそのヒントを探しながら必死で生きているのかもしれないね」  悪ガキの様な口調だった1人は、先程の軽い発言を少し後悔した 「◯さん」 「その呼び方やめましょうよ、私たちに名前はありませんから」 「そうっすけど……」 「何ですか?」  問いかける1人は怒りの表情などは表に出さない。そもそも、2人が互いに見ているのは表情ではないのかもしれない 「さっき拾った歯車の中のタネって途中までは成長してたんすよね?」 「そうですね」 「成長途中のタネを埋め込まれたヒトの人生はどうなるんすか」 「そのヒトが栄養を与え続ければ、そのまま成長しますよ」  1人は驚いた表情で続ける
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