才能の管理人

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「え? じゃあ、生まれてすぐに開花する事もあるわけっすよね。平等じゃないなぁ」 「まぁ、そんなもんなんじゃないですかね。よく、テレビという情報媒体で、何十年に一度の逸材が〜とか、最年少で〜という話がありますが、あれは、そのヒトが生まれた時に、タネがある程度成長した状態で入れられたから、開花までに時間がかからなかっただけなんです」 「ほぇ〜......ヒトの世界はしんどいっすねぇ」  2人は階段を下りながら話している。ここの階段は窓一面がガラス張りで、外の景色がよく見える。 「......しんどいだろうね、特に今日みたいに雨音がする日は不安になります」 「どうして?」 「私たち独自の調査結果なので一概には言えませんが、天気が優れない日は自殺者が多い傾向があるんです」 「それって......」 「そうです。いつもより歯車の抜け落ちる音が多く聞こえるんです。多くの植物の種は成長するために水分を必要とするため、雨を必要としますよね。しかし、何事も適切な量を与えないと、弱ってしまいます。それどころか......」  2人はしばらく沈黙した 「栄養が無くてもダメ、多過ぎてもダメ。才能のタネも同じって事っすよね」 「そうですね。先程、タネの栄養の一つとして努力を例としてあげましたね。ヒトは人並み以上に努力しないと結果はついてこないという考えを持っている事が多いです。しかし、ヒトそれぞれタネを開花させるのに必要な努力(栄養)は違います」 「だから、努力しすぎても自分を殺すだけ......か」 「そのヒトにどれくらいの栄養が必要なのかは私たちにもわかりませんけどね」  何もできない自分を不甲斐なさそうに、1人は苦笑いをしている 「あれ、でも◯さん、さっきあの老人の歯車を拾った時、栄養を多く必要とするタイプでしたか、とか言ってたっすよね」 「あぁ、あれは彼が今まで才能を開花させるために、色んなことに挑戦してきたという事を、この歯車が物語っているからです」
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