魔法使いになりたくて!

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昔から、男勝りな子供だった。 性格も、容姿も、好きなものも。 誰も否定しなかったし、そのまま真っ直ぐに育ったけれど。 本当は、かわいいものも、好きだった。 似合わないからなんて言葉で閉ざしてばかりで。 誰に馬鹿にされたわけでもなく、自分で自分を諦めていた。 いつかの憧れは、とうに消えていた。でも。 そんなとき、偶々流れてきた動画に心を奪われた。 魔法にかけられて、 潡々可愛くなってゆく画面の向こうの彼ら達に憧れて。 初めて買った魔法道具。 捨てられなくて、お守りと化しているけれど。 初めての感動は、未だに覚えている。 鏡の向こうの私は自信たっぷりで、可愛くて。 もっと可愛くなりたい、そう思った。 研究に研究を重ねて、スキンケアもマッサージも頑張って、 潡々変わってゆく私に、感動すら覚えた。 かわいいもの、ぜんぶ周りに集めて。 アクセも服も香水もコスメも下着も。 ぜんぶぜんぶ、誰かの為じゃない、私の為だけの魔法道具。 私は自分に魔法をかける、魔法使い。 誰に馬鹿にされようと、決して怖くない。 私は、魔法にかけられているのだから。
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