列車での出会い

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「『エルバートストン』は小さな国だからね、空港はないよ。陸路でドイツやオーストリアに移動すれば可能だけどかなり遠い。どうしても帰りたいのなら、1ついい方法がある」 「何それ?教えて」 ユウヒはペタに顔を近づけて頼んだ。ペタは少々焦ったが、ゆっくりと話し始めた。 「僕がこの列車に乗って"ラッセル"に向かってるのはね、ある目的のためなんだ。駅から渓谷を下った先に、"暗黒の(とりで)"と呼ばれる小さな古城がそびえているんだけど、その中に『ゼムト』と名乗る我が国の王が住んでいる。ゼムトは独裁者でね、今国民は彼の"無謀な計画"に踊らされ、大変なことになっているんだ」 「計画ってどんななの?」 「恐ろしい企みだよ。ゼムトは人間が"老いる"ことを異様に嫌うんだ。老人には生きている価値がないとまで断言している。働けない老人は生産性がないし、介護や医療などの社会保障を妨げているとね。そして奴は40歳を越えると急激に"老い"が深まると決めつけ、まだ十分に働けるにも関わらず、40歳以上の人々を"強制安楽死"させ、"臓器提供"で社会に還元させようとしているんだ」 ペタは目を大きく見開き、事態を何も知らないユウヒに強く訴えた。 「強制安楽死に臓器提供?それって完全に犯罪よね。だって本人の意志に反して行うんだから、殺人でしょ?」 「ああ、そうだね。大量虐殺に値するだろう。断固として許してはならない。でもこの国は、独裁者である国王が決めたことは絶対なんだ。このままでは奴の思い通りになってしまう。だけどこの計画はまだ施行されてないから、止めるなら今なんだ。僕は直接ゼムトに交渉して、考えを改めさせようと思ってる。ユウヒ、キミも力を貸してくれないか?」 「計画を止める?そんなことできるの?部外者の私に一体何が……」
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