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「僕はこの前占いをやったんだ。この旅である"外国人"に出会うって。その外国人がきっとあなたの助っ人になるって、おばあさんに言われたんだよ。それってキミのことだよね、ユウヒ。こんな偶然の出会いなんて、なかなかあるもんじゃないさ」
そう言って、ペタは嬉しそうに笑顔を見せた。が、ユウヒは浮かない顔のままだった。
「心配いらないよ。もし目的が叶ったら、僕が魔法を使ってキミを日本に送り返してあげるから。だから一緒に"暗黒の砦"まで付いてきてほしい」
「本当に帰れるの?あなた、魔法が使えるのね。それで私にできることって?」
「それはラッセルに着いてから話そう。もうすぐ列車が終点に到着する」
「わかったわ」
ユウヒはまだ不安を抱えていたが、日本に帰りたい一心でペタのお願いを承諾したのだった。
プシュー。
汽笛が鳴り、列車が止まった。"ラッセル"に着いたのだ。
2人は『グリーントラベル号』を降り、駅舎から夜空を見上げた。
「ここがラッセル駅?夜空に輝く星が美しいわね~」
「ああ。『エルバートストン』は星の名所だからね。毎年ヨーロッパ各地から、ラッセル駅に観光客が訪れるよ。さあ渓谷へ行こう。こっちへ……」
ドドーン。
突如大きな音が聞こえ、空に打ち上げ花火が舞った。色は赤・青・緑など多彩で、何発も放たれているようだった。
「花火?すごい、キレイ!"夏の夜"って感じがする」
ユウヒは日本でもよく見かける花火を見て、故郷の田舎を思い出した。
「ラッセルに着くと花火が打ち上げられ、客を歓迎するんだよ。これらもいい眺めだろう。今もう深夜2時なのにね」
「そんなに遅い時間なの?渓谷渡るの、暗くて前が見えないんじゃない?」
「暗がりを懐中電灯で灯して歩くから平気さ。あっちの細い道が"ラッセル渓谷"の入り口だよ。僕の後に付いてきて」
「う、うん」
星空と花火に束の間感動しつつ、ユウヒはペタと共に渓谷へと急いだ。
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