ラッセル渓谷

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ラッセル渓谷

ユウヒとペタは、細い道を通って"ラッセル渓谷"へと入った。 真ん中に川が流れ、左右には砂利道が続いている。道には緑の木々の枝が、川を覆うように生えていた。 彼らは右側の砂利道を、ゆっくりと歩いていった。ユウヒはペタに懐中電灯を借り、暗いながらも明かりを頼りにしっかりと前へ進んだ。 「ねえペタ。この道、結構足場悪いわね。こんなところ、ずっと通るの?」 「大丈夫、30分くらいで砦には着くから。それよりちょっと聞きたい。日本では"老人"はどういう扱いを受けている?尊ばれてるか、もしくは僕らの国のように邪魔者扱いなのか」 ペタに急に質問され、ユウヒは右頬に人差し指を当てて考えた。 「そうねえ。日本人は老人とはあまり言わず、"高齢者"とか"お年寄り"って呼ぶことが多いんだ。私のおじいちゃんおばあちゃんも70歳くらいだけど、まだまだ元気だし。もっと年配の90歳前後の方はね、戦争経験者だから貴重なお話を聞けたりもするのよ。だから日本では割と敬われてると思う」 「なるほどね。僕も老人には敬意を払うべきだと考えているんだ。彼らが若い頃からせっせと働いてきたおかげで、今の社会を築き上げてくれた____それが事実だからね。ゼムトはひねくれた思考の持ち主なんだよ。一緒に説得して、計画を阻止しよう!」 「阻止って……そんな単純にはいかないと思うけど、でも話し合ってみたいわね。ゼムトって人が、どうしてそんな計画を立てるに至ったのか、私には関心があるから」 それから彼らは砂利道を移動しながら、お互いの国のことを楽しく語り合った。『エルバートストン』ではサッカーが盛んらしい。日本でいちばん人気のスポーツは野球だとユウヒは伝えたが、ペタはどうも理解できていなさそうだった。
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