独裁者ゼムト

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独裁者ゼムト

砦に侵入したユウヒとペタは、相変わらず懐中電灯を灯し、手を繋いで歩いていた。さすがのペタも砦に入るのは初めてで、どこにゼムトがいるのかはわからなかった。 「こっちに階段があるね。上ってみよう」 ペタに言われるがまま階段を上ると、先に大きな扉が見えた。すぐにその扉を開ける。 するとものすごく広い部屋があり、急に辺りがパッと明るくなった。そしてその奥から男性の声が聞こえ、ゆっくりとこちらに歩み寄って来た。 「これはこれは。ようこそ"暗黒の砦"へ。私はこの『エルバートストン』の国王、ゼムト。私に何の用かな?少年少女諸君」 王冠を被りマントを羽織った、いかにも王という"地位"を感じさせる格好をした男が、独裁者ゼムトだった。彼はユウヒたちを見るなり、満面の笑みを浮かべた。 「ヤバッ、す、すごいイケメン……」 「ユウヒ?見とれてる場合じゃないよ」 ユウヒは結構な面食いであった。ゼムトの整った顔立ちに、一瞬ドギマギしてしまった。 ペタは少々緊張しながらも、ゼムトに厳しい口調で追及した。 「ゼムト王。僕はペタと申します。あなたは恐ろしい計画を企んでいますよね?40歳以上の人間を強制安楽死させて臓器提供、その臓器を持病を持った若い人たちに移植し、体調を回復させて労働を強いらせる……そんなことが許されると思っているのですか?完全に犯罪ですよ?」 「そうよ!あなたは"老いる"ことを異様に恐れてるみたいだけど……それって自然の摂理なんだから止められないわ。モノだってずっと使っていたら古くなるわよね?仕方ないことじゃない!」 ペタに続き、ユウヒも負けじと意見をぶつける。だが狂ったゼムトには、全く通用しない。 それを聞いたゼムトは無言で背を向けゆっくりと奥へと戻り、椅子に座ってまたも笑みを浮かべ、開き直ったようにこう答えた。
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