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「で、私を呼んだ理由は?」
宇宙港から無骨な車でドーム型施設の一つに移動して、Dr.リーは小さな会議室に案内された。
「この星のことから話すわね」
会議用の机にDr.リーと向き合うように座ったルカが、ちらっと視線を投げる。その視線を受けて部屋の壁に地図が映し出された。
「この星アリサⅣは、海と大陸の割合が大体地球と同じぐらいの割合の地球型惑星なの。けど、大陸は砂漠に覆われていて、生命はまだ海中にしかいないはずでー」
「だから、植民惑星の候補に挙げられてたのね」
「そう。でも三十三日前から、この近くの砂漠から変な『音』がしだしたのー」
「おと?」
「うん。たまたま探査機が飛んでたから録音できたんだけどー」
「風の音、とは違うの?」
「発生源が地中だったのよー。音っていっても人の耳には聞こえない低音域だけどねー」
ルカの言葉から数秒おいて、壁の地図は音の波形を示すグラフと音の発生源と思われる地中の断面図に変わった。
「かなり広範囲から音がしてる? ……それに、音圧も波形も何も一定してない。この音、今もしてるの? 砂漠の観測は続けてる?」
「今も続いてる。だから重要だと思って、観測機器をあるだけ設置してるのー」
「そのデータを解析してみたい。私の研究室はどこ?」
「そうこなくっちゃ。案内するわねー」
美咲は、実際会うと思っていたのとは違った。なんていうのかな? 人間的に余裕がある? どんな人にも笑顔で接して、もちろん偉ぶることなんてなかった。私に対しても対等に接してくれて。気づいたら、私は美咲に惹かれていた。
勿論、美咲と私が釣り合うなんて思ってない。美咲は在学中から画期的な論文をいくつも発表したりして、彼女の専門分野じゃ一目置かれてたし。
私は美咲の背中をずっと追いかけている。少しでも美咲に近づきたくて。
だから、美咲の研究に力が貸せる、そんな幸運に巡り会えるなんて!
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