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帰り際、見送るふたりに阿南は微かに笑ってみせた。鮮やかなブルーの自転車が坂を下ってゆく。
雨はもう止んでいた。キャリアのフレームが強く日を弾く。
家に戻って兄弟はふたり縁側に腰掛ける。
阿南の悩みが解決した訳ではない。彼が剣道を続けるかどうかもわからない。彼らには少年を見ていることしか出来ない。
池内が眼鏡を押し上げた左手を縁側に放り出す。暁人は口元で小さく笑ってから右手を重ねた。
通り雨の去った空が白く光る。飛んでいく飛行機を確かめるように暁人が目を細める。つられて池内も山にかかる背の高い雲を見上げた。
雨も止んだな、と池内が呟く。
そうだね、と長い足を揺らしながら暁人が答える。
夕餉の下拵えでもするかなとふたりは揃って呟いた。
おわり〈2022.7.10〉
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