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『セリムへ
この手紙がおまえの手元に来る頃には、私はもうこの世にはいないだろう。
おまえには、私のすべてがある第11島を任せたい。
この手紙を別紙の地図の場所に持っていけば、かの島に行けるようになっている』
墓所から歩いて15分ほどの領地別棟にある自分の部屋にたどり着くと、着替えもそこそこに、汚れてしまった手紙を窓際に干した。
乾かしながら、その文面を確かめると、たしかに祖父の几帳面な筆跡で書かれている。父が言っていたように、セリムに島を託したいとの内容であった。
ただ、侯爵家の持っている島は10島で、すべて名前がついている。
11島――しかも名前もなく、どうも市販されている地図には載っていない。
新しい島なのか。しかし新しい島だとすると祖父のすべてがあるというのは、どういうことなのか。
この手紙の封は開けられていた。セリム宛てのこの手紙を父は勝手に開けて読んだのであろう。その上で、この島の開拓をセリムに命じたのだ。
もしかしたら、セリムに祖父の遺産を探させて、横取りする気かもしれない。
「お祖父様のすべてがある島……か」
セリムはベッドに寝転がると、うつらうつらとし始めた。何せ、祖父の訃報を目にしてから、休む間もなく王都から領地まで馬車を乗り継いでやってきたのだ。
付け加えて、さきほどの親子のやり取りも、疲労感を強めていた。
「お祖父様のすべてとは、何だろうか……」
セリムは、そうつぶやくと、疲労には勝てず、吸い込まれるように眠りに落ちていった。
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