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それからの私は絵が描けなくなった。
せめて絵だけが私の居場所だったのに、何故、絵を描いているのか分からなくなった。音のない真っ暗な道で迷っていた。それでも描かないと自分が消えてしまう恐怖から描き続けた。
そして描けなくなった。
中学校もだいぶ終わりに近づいたころ、またサプライズが起きた。
ユウ君は残念なことに勉強ができないらしい。私は勉強を教えてほしいと頼まれた。まさかの展開にビックリする。私聾者だよ。普通に勉強するより難しいんだよ。それにそんな勉強できるわけじゃないよ。
だけど、ユウ君の学力を見て愕然とした。あんた何やってたのよ今まで?
私は文化祭で「ありがとう」も言わずに逃げてしまった罪滅ぼしで勉強を見てあげることにした。
あんな事があったのに何事もなかったかの様に授業が始まる。ユウ君は教えるとメキメキ覚えて行った。そうやればできる子なのよユウ君は。だから重ねて聞きたい、あんた何やってたのよ今まで?
図書館の奥の机で疲れて寝ているユウ君の横顔を見ながらそんな事を思った。
そして中学最後のサプライズがやってきた。
あ、えっと、ユウ君が高校受験成功した事じゃないよ。一応言っとくと。
それは、和太鼓クラブの3年生による卒業公演での出来事だ。
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