マーメイドと海を旅する鍛治職人

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青いゆらめき。 水の匂い。 海の底で暮らすマーメイドの耳に、届いた音。 …ぽっとん。ぽっとん。 息をひそめる。もっと静かに。もっと遠くのさざめきを、拾うために。 …さー。ざぁー。 「———あのね。“雨音“が聞こえたの。」 きょとんとする少女へ、母親がやさしく語りかける。 そうして祈るように両手を胸に当てて、目を瞑った。 「…“アマオト”?なあにそれ。お魚さんの名前?それとも海藻、いや、貝さん?」 「いいえ。」 母親は、ただ薬指に光る銀の指輪を抱いて、幸せそうに笑っていた。
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