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鍵と共にポケットから取り出したのは、桜模様のハンカチ。
何もあのまま廊下に置いておけば良かったじゃないか、と今になって若干の後悔が滲んできた。こうして持ってきてしまった以上は、どうにかしなければならない。
「夜までに考えるか……」
とりあえず、仕事は終わらせなければ。
トラックにエンジンをかけた俺は、シワにならないようにハンカチを畳み直しもう一度ポケットにそれをしまった。
そして出発をする前に、なんとなくスマホの画面を覗く。
さくらと別れてからは、こうして意味もなくスマホを眺める時間が増えた。
連絡をしようか…。
連絡がきているかも…。
当初はそのうような迷いと期待が入り混じっての行動だったが、最近は……。
「女々しいよな、俺も」
そのまま、真っ暗になった画面のスマホを助手席に置き、シートベルトを締めた。
世の中、どうにもならないこと、どうにもできないことはたくさんあるんだ。
だって、過去は変えられないからーーー
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