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「お疲れさまっしたー!」
「はい、お疲れさま。また頼むよ」
最後の配送先での積み降ろしを終え、トラックに乗り込もうとした俺の前に、缶コーヒーが1本差し出された。
「ありがとうございます!」
ありがたくそれを両手で受け取り、俺は矢島さんに頭を下げる。
ーーー思えば矢島さんとも、もう随分と長い付き合いになるな。
俺が大型トラックに乗るようになって翌年には、この矢島木工への配送を頼まれるようになったのだから...もう7年か。
当時、まだ若僧だった俺にも気さくに接してくれていた矢島さんは、出会った当初からずっとこうして帰り際に缶コーヒーを手渡してくれる。
「これから雨が降るそうだから、帰り道は気をつけてな」
「はい!」
トラックに乗り込んだ俺は、手を振る矢島さんに向けぺこりと頭を下げ、矢島木工を後にした。
バックミラー越しに見ると、矢島さんはいつまでもその場に立ち、俺を見送ってくれている。
その行いも、この7年ずっと変わらない。
「いい人だな、本当に」
白髪交じりの髪に少し垂れ下がった目元。
本人に確認をしたことはないけれど、恐らく年齢は60代くらいだろう。
...きっと、親父が生きていたらあんな感じだろうな。
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