1. 違和感

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 日が昇るのが早くなってきたなーー 朝、家を出ようと玄関の扉を開けた瞬間、真っ直ぐに射す陽光に思わず目を細めた。 まだ5時前だというのに、外はすでに明るい。 つい最近まで、この時間はまだ真っ暗だった気がするのだが…。 「ん?」 鍵を閉めようと、未だ微睡(まどろ)んだ状態で太陽に背を向けたその時、足元に何か落ちているのが視界に入った。 「ハンカチか」 明らかに女性ものだろう。 綺麗に折り畳まさっているピンク色のハンカチを拾い上げると、見覚えのある桜模様が目に飛び込んできた。 「これって……」 チラリと、隣の部屋に視線を向ける。 うろ覚えではあるものの、昨夜お隣さんからもらったタオルと、同じ柄な気がする。 しかし、仮に彼女のものだったとしても、こんな朝早くにチャイムを鳴らす訳にはいかない。 それなら部屋の前にそっと置いておこうかとも思ったが、それもなんだか気が引ける。 「やっべ、時間!」 会社に遅刻しそうになった俺は、とりあえずズボンのポケットにハンカチを突っ込み、アパートの階段をかけ下りた。
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