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「となりに越してきた……倉田 ✕✕✕です。よ、よろしくおねが……いします」
「はぁ、どうも」
深々と頭を下げる女の、つむじを見下ろす。
垂れ下がる長い髪に隠れ、その表情は全く分からない。
どもっているせいか、はたまた声が小さいからなのか。倉田と名乗るその女性の下の名前は、聞こえなかった。
「こっ、これ……よかったら使って下さい」
頭を上げるとほぼ同時に、女は四角い包みを俺の目の前に勢いよく差し出した。形状から見て、恐らく中身はタオルだろう。
「ありがとうございます」
タオルくらい、別に断る理由もない。
二つ返事でそれを受け取ると、俺は軽く頭を下げた。……が、
「……あの?」
なぜか、女はじっと俺を見つめたまま、その場から動かなかった。
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