初夏の話。

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その内容は、 君が、亡くなったこと、だった。 意味がわからなくて、は、と音が口から溢れる。 何度も何度も聞き返して、混乱したままの頭が真っ白になる。 どうして、どうして? 家の近くの川で氾濫警戒情報が出ていたが、 少女が溺れており、助けたのち流されたらしい。 消防を呼ぶなり、大人を呼ぶなりすればいいのに、なんで。 いや、君は何も悪くないな。 君がいてもたってもいられない性格なのは、わかってるから。 僕が、君の家まで送っていれば、 君だって助かったかも知れなかったのに。 風邪をひくからとでもどうとでも言って、 無理にでもついていけばよかったんだ。 なんて言っても、どう悔やんでも、君はもう、戻ってはこない。》 君が好きだった、マスカット味のジュース。 君を忘れたくなくて、大人になって飲んでみたけれど。 屹度僕は一生好きになれやしない。 それでも君との繋がりを感じていたくて、 毎日一本、胃に流し込む。 あの日の事を今でも鮮明に覚えているし、 屹度忘れる事は一生無い。 君が居なくても毎日日は登る、だなんて ありきたりな歌は聞き飽きたけれど、 それでも忘れられなくて、どうしようもなく過ごしている。 君に借りた傘は、返すに返せなくて、今も戸棚の奥に眠っている。 ごめん。たぶん、一生返せそうにないな。 先程買ったビニール傘をさそうか悩んで、躊躇って、辞めた。 雨の下でなら、泣いている事もバレないだろうからと。 マスカットジュースを飲み干して、ゴミ箱へ放り込む。 そうやって、傘を閉じた、そんな初夏の話。
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