ねえ、AI

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「ねえ、AI(アイ)、生姜焼きとハンバーグ、どっちがいいかな?」 『最近の体調を鑑みると、ビタミンB群が豊富な生姜焼きをお勧めします』  こんな会話が日本中いたる所で聞かれるようになった。  スマホに組み入れられているAIの進化は凄まじく、いまや日本人の健康管理、資産運用、結婚相手の選定にまで関与する存在となっていた。  個人情報は全てデータ化され、ビッグデータとして管理されている。スマホAIはそのデータにアクセスし、そこから得られる最善の選択は、日本人にとって失敗しない人生を歩むために不可欠なものとなっていた。 「ねえ、AI(アイ)」という、スマホAIに話しかけるキーワードは、もはや日本人にとって生活の一部であった。 「ねえ、AI(アイ)。赤ちゃんがぐっすり眠れるような音楽をかけて」 『了解しました。では、こちらの音楽を流します』  室内に静かで心地よい音楽が流れ、ベビーベッドで寝ている赤ちゃんは、愚図ることなく目を閉じて小さく呼吸をしている。 「ねえ、AI(アイ)。今日会った山本さんは、結婚相手にどう思う?」 『山本聡さんは、勤め先も収入も安定していて、次男だということも希望に合致しています。健康状態にも大きな問題はなく、あなたと会っていた時の音声診断では、あなたへの好意は明らかです。性格検査の結果からも、高確率で結婚相手として望ましいです』  日本人の健康状態は世界でも優良な部類となった。結婚や子育てについてもAIがサポートすることによって、出生数は上がってきた。衰退の一途を辿っていた日本にとって、スマホAIは国の維持という希望を叶えてくれた存在になっていた。  某国…… 「私たちが操っているスマホAIによる日本国民の洗脳は順調だな」 「ああ、これで奴隷に近い労働力と有事の際の戦力は確保できたよ」 「日本人のようなまじめな国民性は、我々にとっての希望だよな」 了
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