あなたが俺を好きじゃなくても

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孝太郎が要のくせっ毛を撫でながら二人はベッドに背を預けていた。 先程までの情交の余韻がまだ残っている。 「ねぇ、孝太郎」 「ん?」 「男同士でも天罰は下らないのかな?」 要が不安そうに孝太郎に尋ねる。 「そんな天罰下ってきたら跳ね返してやるよ」 男同士なんて幸せになれないと思っていたけれど、今、要は間違いなく幸せで。 それが酷く怖かった。 「俺、怖いんだ。こんな幸せもいつかなくなってしまうんじゃないかって」 「そんなに俺の事が信用できねぇのか?」 孝太郎が要の瞳を覗き込むようにして問う。 「違う……でも怖い……今までの人生…男が好きで報われたことなかったから……」 「別に男が好きなわけじゃねぇだろ」 「え?」 要が目をパチクリとしてキョトンとする。 「人が好きなんだろ? 少なくとも俺は要っていう人が好きだ」 「孝太郎……」 「不幸になるなんて考えるなよ。俺が幸せにしてやるから」 ボロボロと要の瞳から涙がこぼれる。 「結婚しよう、要」 「けっ……こん?」 男同士で結婚なんて出来ないじゃないか。 孝太郎は一体何を言っているんだろうと思う。 「事実婚だよ。今度指輪見に行こうぜ」 「孝太郎……」 「泣くな泣くな」 孝太郎が触れるだけのキスを要に送る。 「好きだ、要」 孝太郎が要をぎゅっと抱きしめる。 「孝太郎、俺も」 「やっと好きだって気づいた要、一生離さねぇから」 二人は再び唇を合わせた。 天罰なんてくらってたまるか。 そんなものは初めから生じていない。 二人には幸せになる権利があるのだから。                            - END - >>next あとがき
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