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孝太郎は要が務める白鳳出版社の先輩だ。
三つ歳が離れている。
孝太郎が28歳で要が25歳。
要は思春期に入った頃から、自分の性の対象が同性だと気がついた。始めは戸惑った。戸惑ったがどうしても女性を好きになることが出来ず己の性癖を受け入れた。
大学生になって初めて彼氏が出来た。バイセクシャルの男だった。
しかし酷い振られ方をした。
他に女性が居て要は簡単に捨てられた。
「やっぱ男より女の方がいいわ」その言葉を要はずっと覚えている。
それ以来恋愛はご無沙汰だったが、新入社員で入社した今の出版社で孝太郎に出会った。孝太郎は後輩の要に親切に指導してくれ、その優しさに要は気づけば恋に落ちていた。
孝太郎には要から告白した。一世一代の告白だった。
「宮藤先輩のことが好きです」そう告白した時の孝太郎が目を見開いた顔を忘れられない。
自身の性癖もカミングアウトした。
返事はまさかのOKだった。
要は信じられない思いでいっぱいだった。
孝太郎のことが好きで好きで、気持ちを閉じ込めておくことが出来なくなって。振られる覚悟で想いだけ伝えよう、そう思ってした告白だったから。
けれど……。
けれど、孝太郎は要を好きではなかったのだ。
ただの好奇心、興味本位。
それが今日発覚した。
指導してくれていた時の、あの優しさはなんだったんだろう。
やっぱり自分には幸せになる権利なんかないんだ。こんな性癖を持っている自分は幸せになる権利なんかないんだ。
翌日のことだった、孝太郎が同じ部署の赤星ゆうこと一緒に帰っていった。
孝太郎は同性愛者じゃない。
普通の人なんだ。
そう思うと孝太郎を責める気持ちにもなれなかった。
全部自分が悪いんだ。
付き合って欲しいなんて言ってしまった自分が。
孝太郎を繋ぎとめておくことなんて無理な話だったんだ。
孝太郎が好きだ。
でも孝太郎は自分の事を好きじゃない。
遊ばれているだけだ。
それなら関係を絶ってしまった方がいいのではないか……しかし孝太郎に縋ってしまう自分がいて要はどうしたらいいのかわからなかった。
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