オレンジの海月

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大会が終わり、表彰式が始まった。 お兄ちゃんの学校の後輩が、表彰台の一番高いところにいた。 彼はお兄ちゃんがいれば、そこには絶対に誰も立てなかったと言う。 女子の部で優勝した選手は、お兄ちゃんと同じ夢を語っていた。 オリンピックに出て、多くの人に夢と元気を与えること。 そしてそれを共に叶えるはずだった人がいなくなって、これからは一人でその人の分も頑張るということ。 その話を聞いて、私は思わず涙が出た。 あの夜、お兄ちゃんのスマホで見たからピンと来ていた。 あのプリクラに写っていた女の子と、同じ顔だったから。 大会が終わってみんなが会場から出てくるとき、私は両親とはぐれてしまった。 私は人が少なくなるところまで歩き、そこで少し親を待つことにした。 「そこ、濡れてるから座らないほうがいい」 私が低くなっている塀のような部分に座ろうとした時、横からそんな声が聞こえてきた。 「……ほんとだ、ありがとう…」 声の方を見ると、私より少し歳上に見える男の子が立っていた。 その子を見た途端、私は言葉を失った。 高い身長にスラリと伸びた手足。 小さな顔は真っ黒に焼けていた。 明るい色の髪の毛はサラサラと風になびいていて、眼鏡の奥の真面目そうな瞳が真っ直ぐこちらを見ていた。 彼は、驚くほど…… 私のお兄ちゃんにそっくりだった。
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