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そのせいか、私は泣きそうになってしまった。
嬉しいようなビックリしているような悲しいような寂しいような……
グチャグチャな感情をコントロールすることはできず、つい涙を零してしまった。
「どうしたんだ?」
その子は怪訝そうに私の顔を覗き込む。
「………ううんっ………なんでもない…」
私は涙を手で抑えながら、何とかそう答える。
私は、本当に弱いな………
今日だって、お兄ちゃんが本気になっていたものに触れることで強くなろうと決めていたのに。
ちっとも強くなってない。
みんなはお兄ちゃんのことを受け入れて前に向かっているのに、私だけいつまでもメソメソしている。
「……………悲しみが消えないのに、無理して消そうとしなくてもいいと思う。今君が何で泣いてるのかは分からんが、泣いてしまう自分を責めれば、そんな自分を誰が見守ってくれるんだ?
涙が止まらないほど追い詰められているなら、そんな自分を見守り受け入れられるのは自分しかいないんじゃないか?」
眼鏡の奥の綺麗な目で、彼がそう言った。
その優しい目つきはお兄ちゃんに似ていて、彼から出てくる言葉も…私の心の鉛を溶かして温かくした。
「……そうだね…!」」
私は精一杯、そんなことしか言えなかった。
だけど彼は、まるでお兄ちゃんの生き写しのようにそっくりな雰囲気で微笑んでくれた。
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