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「梨々、大丈夫か?」
カメさんよりもゆっくりペースで私とお兄ちゃんは少しずつ海に入った。
「うん…」
私は怖かったけど、隣にお兄ちゃんがいるおかげで足の震えが収まってきていた。
「梨々もいつか、俺と一緒にこの広い海で泳げたら最高なのにな!
すっげえ気持ちいいぜ?海の流れに体を任せながら泳ぐのは」
お兄ちゃんは海が大好きな人だった。
晴れた空を眩しそうに眺めながらお兄ちゃんはいつもそんなことを言うのだった。
黒光りするほど焼けた肌は、太陽の贈り物。
茶色く輝く髪の毛は、渚の化身。
真っ白な歯を覗かせる笑顔は、眩しくて大きな日向のよう。
私はお兄ちゃんの全てが大好きだった。
昔から甘えん坊で怖がりで泣き虫な私を、ずっと近くで優しく見守ってくれて助けてくれた。
引っ込み思案だった私も、明るいお兄ちゃんの前では沢山お話できる子になれた。
お兄ちゃんは背が高くてスタイルがよくて、焼けた肌が引き締まった体を強調していた。
茶色い髪はワカメのようにサラサラと伸びていて、普段かけている眼鏡にかかっていた。
そんなお兄ちゃんは学校でも人気者で女の子にもモテモテだった。
大人しい私はそんなお兄ちゃんを羨ましく思っていた。
私とは性格も見た目も正反対だった。
私は、ずっとお兄ちゃんみたいになりたいと思っていた。
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