6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
その日の夜。
私とお兄ちゃんは皆でご飯を食べたあとに、家の前で花火をすることにした。
おばあちゃんの家は周りを田んぼに囲まれていて、隣近所のお家から500mくらい離れていた。
「ほら梨々、線香花火だよ」
2人で沢山の花火をやった。
手持ち花火をアスファルトに近づけると、白く文字がかけることを教えてもらって、2人でいろんな落書きをした。
あっという間に最後の一つ、線香花火だけが残っていた。
「私、お兄ちゃんと勝負がしたい!どっちの線香花火が長く持つか!」
「いいね!もし梨々が負けたら明日は今日よりも長い時間海に入ろうな」
「えーーそれはやだ!絶対勝つ!」
「俺だって梨々と早く一緒に泳ぎたくてずっと待ってるんだよ?だからこの勝負も負けられないね」
「私だって負けないもん!」
私の言葉にお兄ちゃんは優しく笑って、2人の花火に火をつけた。
パチパチパチパチ……
いろんな虫の音が遠くで聞こえるのに重なって静かな花火の音が響く。
大きく広がって跳ねる火の華は、言いようのない儚さを含んで二人の前で踊っていた。
線香花火の火の勢いは、まるで私たち人間の命の姿を表しているようだった。
輝きを増して増して増して最後に散る。
だけど散る瞬間も、とても美しい。
尊い終わりを迎えた火の先は、地面に落ちてからもしばらく炎を小さく主張する。
1度しか来ないこの夏を忘れないで……
そう訴えられているような、そんな気がした。
最初のコメントを投稿しよう!