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寝そべりながら泣いたから、自分の涙が床に落ちたのが見えた。
涙が口に入ってくる。
冷たくて温くて、少ししょっぱい涙の味。
それはまるで、昨日お兄ちゃんと一緒に入った海の味。
同じ味だけど、大きくて広い海とちっぽけな私の涙。
まるでお兄ちゃんと私の差みたいだ。
この時のことを、きっと一生後悔すると思う。
この時迷ったなら、意地なんて張らないでお兄ちゃんのところにいけばよかったんだ。
急いで準備して水着に着替えて、海でお兄ちゃんと仲直りすればよかったんだ。
そして昨日のことを謝って、本当は私にとっても離れようがお兄ちゃんは変わらず一番大事で大好きだよって伝えればよかったんだ。
だけど私に残されていたそんな選択肢は、全て波と共に大海原へとかき消された。
昨日お兄ちゃんと見た夕凪に染まる優しい波の綾は、今日になって突如荒波として牙を向いたのだった。
私が泣き疲れて寝ている間に、お兄ちゃんは帰らぬ人となっていた。
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