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お兄ちゃんは、最後の瞬間まで私を待って海にいたようだった。
夕陽が射し込む海でお兄ちゃんを見つけた近所の人は、まるでオレンジ色の美しい海月が海に浮かんでいるかのようだったと言った。
それを聞いたとき、私はいつもプカプカと浮かび楽しそうに笑うお兄ちゃんを思い出した。
眩しく輝く髪と笑顔と優しい声。
確かに美しいオレンジ色の海月だった。
ここら辺の海は、突然波の高さが変わるから気をつけなさいと何度も言われていた。
天気も急に変わってしまうから、と。
なのにお兄ちゃんは、私が来るギリギリまで待っていた。
どうして……………………
お兄ちゃんは絶対に溺れないんじゃなかったの?
いくら波が高くても、流れが早くても、お兄ちゃんなら余裕で波をかき分けて浜に上がってこられるんじゃなかったの?
お兄ちゃんを責める気持ちは、すぐに自分へと勢いつけて向かってきた。
私がお兄ちゃんを殺したんだ。
私のせいでお兄ちゃんは………
どうして素直にならなかったんだろう。
どうして自分の気持ちばっかりで、お兄ちゃんの言葉を聞こうとしなかったんだろう。
最後くらい、ちゃんと話せばよかった。
最後くらい、目を見ればよかった。
最後くらい、大好きだよって伝えればよかった。
溢れても溢れても止まらない後悔と自責の念は、時間を昨日の夜に巻き戻してくれと願う気持ちに何度も結びついた。
昨日の夜お兄ちゃんから聞かされた、遠くに行くっていう話。
こんなにも早くその日が来てしまうなんて、心が追いつくはずがなかった。
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