雨傘地蔵

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 夏休みも終わり、マナは都会での一人暮らしに戻っていた。  九月に入ったが、夜はうだるように暑い。  電気代をケチってエアコンを点けるのを我慢したマナは、バルコニーへ繋がるガラス戸を開けて眠っていた。  マナの部屋は五階にあり、向かいに背の高い建物もないから大丈夫だろうと思ったのだ。  しかし夜中、重みと息遣いを感じて目覚めた。  目を開くと、ベッドに仰向けに転がっているマナの上に、何かが覆いかぶさっていた。  何かは、鼻息の荒い男だった。  一瞬で意識が覚醒し、マナは叫ぼうとした。しかしそのマナの顔に、男が丸めたタオルか何かを押し付けた。  マナはパニックに陥った。  暴れるが、男は完全にマナの胴体の上に跨っている。左手を押さえつけられたので、空いている右手を振り回して相手を引っ掻いた。  しかし男は動かず、次第にマナは息苦しくなってきた。タオルで遮られているせいでほとんど呼吸ができない。  助けて――  混乱した頭の中で叫んだ時、マナはざああという水音を聞いた。  マナの部屋は1Kで、ドアの向こうに廊下とキッチンと風呂がある。  風呂の中で誰かがシャワーでも使っているのだろうか。  音を聞いた男が、びくりと跳ね上がった。  男は転がるようにベッドから降り、開け放たれているサッシからバルコニーへ飛び出していった。  マナはベッドから転がり落ち、しかし床の上に落ちているスマホを掴むとすぐに110番通報した。
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