無限

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無限

病院の片隅で、時折こんな話をするナースがいる。 「ねえ、あの病室の女性の患者さん、もうずっと目覚めないけど、身寄りもないしこのままどうなっちゃうのかしらね」 「心中だったのかわからないけど、あんな高いところから飛び降りるなんて……一人になってしまって、何だか気の毒よね」 今日は朝から雨が降り注いでいる。 私は病室から起き上がると、身体の記憶を辿るように屋上へと足を運ばせる。 呼んでいる。 何度も私の居場所を促すように、雨音は高台へと私を誘いにくる。 さあ、欄干を乗り越えて、ここからまた繰り返される。 私の、限りなき地獄。
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