予感

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「大丈夫ですか? お名前、言えますか?」 いつもの病院、いつもの医者と看護師が私を出迎える。まるで初めて私を見るような感じで。 そして、一週間もすると何事もなかったように病院から退院する。こんなに回復が早いのは珍しいようで、毎回病院の職員は「奇跡です」と、口々に声を荒らげる。 私は、奇跡の人、なんだろうか。 いや、そんな大物ではない。 かの有名なヘレン・ケラーのように、偉業を成し遂げた訳でもなく、何かを起業したり活躍したりすることなどあるはずもなく、極めて平凡に目立つことなく毎日をやり過ごしていただけだ。 強いて言うならば、ただ単に回復が人より異常に早い、というだけに過ぎない。 やはりこの体験は、夢ではなかったのだ。 そんな無力だらけの私は、一体どこへ向かえばいいというのだろう。天涯孤独の独り暮らし。身寄りもないまま訳もわからず就職と同時に東京へ上京し、そのまま今もずっと独りでいる。
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