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きっかけ
つーくんとは、それなりに深い関係になった。私の初めての大人の恋であり、自身にとって深い愛情を知った。
指と指が絡み合い、彼と私の身体が重なり合い交差する。それが何を引き起こすことになるのかもわからないほど、彼を濃厚に求めていた。
それが形となって現れ始めたのは、つーくんと知り合ってから二年が経った頃だった。見つめ合えばお互いを求め、触れ合えば相手のことをもっと知りたくなった。
知れば知るほど、相手への思いは強くなる。強くなるからこそ、わがままに束縛したいと思うのが常である。
しかしながら、相手のことを愛するがゆえ、相手の自由を尊重したいということも否定できない。私はそちらを常に優先した。
つーくんの本音は、どちらだったのであろう。
私の中に新しい命が宿り、いつしかそれを報告することが私の義務になった。
仕事が軌道に乗り出すと、私とつーくんのすれ違いは幅広くなっていった。つーくんよりも仕事を優先せざるを得ない私に、彼の中に落とされた小さな青黒い雨粒は、どんよりとした奥底で着々と波紋を広げ、徐々に大きな波へと変化するのにそう時間はかからなかった。
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